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『夏の記憶』(速報!甲子園への道)

あの熱い『夏』が、また来る。
夢を叶えんとする者にとっては、負けることが許されない『夏』が・・・。
その『夏』は、時に甘美であり、時に非情である。
取材者として、それを目の当たりにする『夏』の証人がいた。
証人たる彼女は、その『夏』を前に何を想うか。

アナウンサーになって、高校野球を担当して、夏は私にとって特別な季節になりました。球場、スタンド、ベンチ裏、汗、涙、声援、そしてスタジオ・・・。本当に記憶に残る瞬間が多いんです。昨日食べたものさえ思い出せないのに『夏』の記憶だけは鮮明に脳裏に焼きついている・・・。今年はどんな記憶が残るのか?その『夏』がまたやって来た!という思いです。

とにかく責任を感じています。というのも、高校三年生の野球部員にとって夏の大会は『最後の夏』といわれますが、私自身これまで生きてきた中で『最後の』という経験がない・・・。『最後の』ってどんなの? 故に、選手たちの『最後の』にかける思いを真摯に取材し、そして伝えきらないといけない。それが今年も私にできるか?・・・本当に責任重大です。

毎年、反省点があるんですが、去年はあまりにも感情に左右され過ぎた・・・。毎日、何回も涙を流していました。その涙は、自分が上手くできないことに対しての涙なのはもちろん、取材するチームや選手に対する感情移入から来る涙も多かった。そうなると伝え手としての客観性のバランスが崩れてしまうんですよね。それと同時に放送本番の喋りもガタガタと崩れてしまう・・・。本当に去年は感情に振り回された夏でした。ディレクターから『泣くな!』って何度言われたことか。だから今年は感情を抑えながら、よりニュートラルな視点で高校野球を捉え、伝えたいと思います・・・が、うーん。できるかな?

それは探究心です。投手が投げる一球一球にはそれぞれ意味があり、ひとつとして無駄な球は無い・・・といわれますが、球児が見せる表情も同じだと思うんです。球場に向かうたびにその表情の根底にあるものを突き詰めたいという思いが募ってきます。その理由が、選手本人はもちろん、家族、友人、周囲の人に聞けば聞くほど分かってくる。そして知れば知るほど、これまで気づかなかったさらに細かい表情が見えてくる・・・。放送の中で上手くリポートできた時よりも、期せずして表情の理由を見つけた時のほうが嬉しく感じるって、アナウンサーとしては失格ですよね。(笑)

去年、『甲子園への道』の中で放送するVTR部分のナレーションを8回録り直したことがありました。何度やっても上手くいかない私に、ディレクターが「他のアナウンサーにやってもらおうか?」と一言。正直言って、その言葉を聞いたとき私の心は揺らぎました。苦難から逃れられる・・・と。でもそれは『逃げ』でしかないんですよね。いま目の前にある原稿を視聴者の皆さんに伝えきること・・・これが私の仕事なんだ! そう自分に言い聞かせ、「やります。やらせて下さい!」と、ディレクターに言葉を返した瞬間から私は変わったような気がします。もし、その時逃げていたらきっと後悔していた。今の私を支えているのは他でもない、あの『夏』の記憶です。

Interviewer : YASUHIRO HOSHI 2008.7.10(Thu)

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