2007年問題
2007年は、「団塊の世代」の中でも最も多いとされる昭和22年生まれの人たちが60歳の定年を迎え一斉に退職する。
企業の危機感は高まっている。厚生労働省の調査によれば、「特段何の取り組みも行っていない」企業はわずか21.9%。約8割の企業が何らかの対策をとっているということになるが、その多くが雇用の延長や再雇用制度。
最も大切とされる「技能・ノウハウ等の伝承」を行っている企業は9%にすぎない。「マニュアルは伝えられても、本当の技術を伝えることは難しい」と言われる。日本の高度成長期を第一線で引っ張ってきた団塊の世代の技術の継承が急務だ。
対策が急がれるのは民間企業だけではない。
思春期の我々の心を揺さぶった「金八先生」武田鉄矢さんも昭和24年生まれの団塊世代。金八先生だって間もなく退職なのだ。
名古屋市の場合、約8800人の小・中学校の教師のうち、この先5年間で実に1500人が退職を迎えるという。
名古屋市教育委員会では教職員確保の為、毎年400人を採用する計画だ。さらに東京や大阪の教育委員会が名古屋に乗り込み採用説明会を開くなど、奪い合いも始まっている。10年ほど前には十数倍だった採用試験の倍率も5倍程度まで下がっているという。
「教育の質を落とすわけにはいかない」と名古屋市教育委員会も教育技術の継承に努める。
ベテランの力が必要な場所は他にもある。
テレビの刑事ドラマで、なかなか自白しない容疑者を落とすのは
きまって人情味溢れるベテラン刑事だ。
愛知県警昭和署は去年の8月、その名も「伝承塾」を開講した。
幹部署員が講師となり「取調べのポイント」「職務質問の着眼点と心構え」といった講義を月2回、2時間ほど行っている。
昭和署の桐生署長は若手警官にこう呼びかけたという。
「失敗を恐れるな。失敗から学べ。成功から学ぶことは少ない」。
もちろん警察として失敗を容認するわけではない。しかし、若い時にしかできない失敗がある。そこから学ぶことは大きい。
様々な現場で、ベテランの技術が伝えられる2007年は技術大国・日本にとって基本を見直すチャンスでもある。