襷(たすき)に思いを込めて
名古屋の熱田神宮から伊勢神宮までの106.8kmを
駆け抜ける全日本大学駅伝。
選手たちはチームのために必死で襷を繋ぎます。
駒澤大学の3連覇で幕を閉じた40回記念大会。
ある特別な思いで走った選手がいます。
日本体育大学4年、石谷慶一郎選手。
彼は水頭症を患っています。
脳の周りに水が溜まる病気で、
生後2ヶ月ですぐに手術、これまでに8度の手術を受けました。
今も、脳からお腹にかけて管が通っています。
医師からは「将来は歩けなくなる可能性もある」と言われたそうです。
サッカーや水泳などは止められたものの、
ランニングだけは大丈夫と言われ、走り続ける石谷選手。
「病気をマイナスと捉えたことはない。
辛い入院時期を乗り越えてきたことで、陸上の辛さにも耐えられる。
あれだけ辛い思いをしたから、陸上の練習なんて辛くないと思える。」
レース前、私達の取材にそう話してくれました。
「自分が駅伝を走ることで、全国の水頭症を抱える人を励ましたい」
そんな思いで臨んだ、自身4度目、最後の伊勢路。
三重県津市から松阪市へと入る6区を走り、区間14位。
去年準優勝の日体大は結局9位でゴール。
石谷選手たちにとって悔しい伊勢路となりました。
しかし、石谷選手の走りを見て、
石谷選手が今年も走ったという報を聞き、
励まされた人がいるはずです。
次は箱根。
石谷選手の襷を待っているのはチームメイトだけではありません。
全国の同じ境遇の人たちのために。
石谷選手は懸命に走ります。