ナゴヤからのエール
プロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズがいよいよ開幕。
ドラゴンズの連続日本一への挑戦が始まる。
プロ野球につきものなのがトレード。
6月、ドラゴンズは、石井裕也投手と小池正晃選手のトレードを発表した。
石井は東海地方の人たちに勇気を与えてきたピッチャーだ。ドラゴンズに入団して4年、7勝。
石井は、難聴というハンディを抱えている。
左耳はほとんど聞こえず、わずかに聞こえる右耳に補聴器をつけコミュニケーションする。
普段の会話はもちろん、試合中のキャッチャーとの意思疎通やコーチとの会話など不便なことは多い。
石井投手がプロ初勝利を挙げた“05年4月13日のカープ戦。
ヒーローインタビューのお立ち台に立った石井は涙ぐんでいた。
「自分の気持ちを全て出して頑張りました」。
翌日、愛知県立名古屋聾学校の朝礼では、校長先生がこの石井の勝利を生徒に報告した。
ある男子生徒は
「耳が聴こえなくても、努力をすればいいことがあるんだと分かった」と話した。
多くの人に勇気を与えてきた石井が横浜へトレード。
トレードとは取引であり戦力を交換する事。
損得勘定もあれば駆け引きもある。
しかし、今回はドラゴンズからベイスターズに引き継がれたものがある。
そこに敵・味方はない。
それは、石井とのコミュニケーションの方法。
石井がベイスターズに移籍するにあたり、ドラゴンズの球団関係者はベイスターズと連絡を密にし、
石井のサポート体制について事細かにアドバイスした。
「とにかく石井の口の動きの特徴を早く覚えて、石井の言いたいことを理解すること」、
「電話では連絡事項が伝わりづらい。メールを活用すること」など。
プロ球団が別の球団にアドバイスをするのは稀なことだろう。
石井は、今月9日、優勝を目前にしたジャイアンツ相手に先発し好投、
見事に今シーズン2勝目を挙げて見せた。
横浜から多くの人に勇気を与えるはずだ。