佐藤 裕二

PROFILE

ニュースの時間

守りたい美しい日本語

アナウンス部日本語警備部の私

今年は「日本語変革元年」になる。
大げさかもしれませんが、そう予感させる2つの辞書が発売されました。
ひとつは日本を代表する国語辞典「広辞苑 第6版」。
僕もいつもお世話になっている発行部数1100万部の巨人が今年、10年ぶりに大改訂。10万にも上る候補の中から新しく仲間入りした言葉達は、今の世の中を映します。
「メタボリック症候群」「特定外来生物」「デジタル放送」など、確かにこの10年で定着した言葉という印象です。
と同時に驚きの言葉も収録されました。
例えば「いけ面」・・・若い男性の顔かたちが優れていること。また、そのような男性。「いけ」は片仮名かと思ってましたが広辞苑では平仮名でした。
その他にも「うざい」「ラブラブ」「自己中」といったいわゆる若者言葉が並びます。
実際、普段の生活の中で使う言葉ではありますが、アナウンサーの私としては美しい日本語を大切にしたいとも思います。

「裕二さんってKY」と失礼なことを言う、後輩の堂野クン

もちろん日本語は変化します。私達が使っている言葉も、江戸時代とは随分変わっているはずです。今「○○でござる」と言う人はいません。アニメ「一休さん」の新右衛門さんくらいです。
日本語は生き物です。
「依存」の読み方は正しくは「いそん」ですが「いぞん」が定着していますし、
「荒らげる」の読み方は「あららげる」ですが放送でも「あらげる」もOKとされています。これらは「慣用読み」と呼ばれ、間違った読み方が定着したものです。
「全然問題ない」という表現も市民権を得たでしょうか。
しかし、今の若者のあまりにも乱れた言葉遣いには眉をひそめてしまいます。
ローマ字略語辞典「KY式日本語」(大修館書店)なるものも発売されました。
「KY」・・・空気が読めないに代表される略語、約400語が掲載されています。
ここに掲載されている言葉達はもはや暗号です。
最近の若者は「佐藤裕二ってKYでMM、NDって感じじゃね~?」と使うようです。
「佐藤裕二ってKY(カッコヨク)でMM(メチャモテル)、ND(今日はナゴヤドームに行っている)って感じじゃね~?」という意味ではもちろんなく、
「MM」は「マジムカつく」、
「ND」は「人間としてどうよ」、という意味なんだそう。
直接的表現ではなく、ローマ字を使うことで、言いにくい本音を口にしているようにも感じます。
否定的な表現ばかりではなく、楽しいものもありますが・・。

アナウンス教則本とアクセント辞典を手にする堂野クン。
修行してください。

確かに私も学生時代は「あけおめ、ことよろ」とか「ガン混み」(とても渋滞している)といった言葉を使いました。
「私的には」という言い方や、質問しているわけでもないのに語尾を上げる「半疑問」が広がった時期もありました。
言葉は時代ともに変化していきます。
しかし、「日本語のプロ」である私達アナウンサーは、変化の最終ランナーでありたいと思うわけです。

もちろん時代を超えて使われ続け、守っていきたい言葉もあります。

「最近の若いもんは・・・」。