ハンドルを握るものとして
約1.5tの鉄の塊が時速50キロ前後で走る。わずか数センチですれ違う。
人の理性で車社会は成り立っている。
去年、交通事故で死亡した人の数は全国で5743人。
そのうちの一人が、タレント風見しんごさんの長女えみるさんだ。
去年1月17日の登校途中、当時10歳だったえみるさんは
横断歩道でトラックに轢かれ亡くなった。
風見しんごさんは著書「えみるの赤いランドセル」(青志社)の中でこう綴っている。
「それまで『行ってきます』のあとには必ず『ただいま』があるものだと思っていました。
でも、えみるは違いました。
あの日の朝、『行ってきます』という言葉を残したまま、
もう二度と『ただいま』というあの元気な声を聞かせてくれることはありません」。
交通事故は、ある日突然、愛する人を奪う。
ただ実は、交通事故死者数5000人台というのは54年ぶりのこと。
4年前の死亡者の数は7358人。1500人以上も減っている。
愛知県内で去年、交通事故により亡くなった人の数は288人。
300人を切ったのも54年ぶり。
3年連続全国ワースト1ではあるが、5年前の398人から110人も減っている。
やればできるのだ。
一人一人が
ちょっとずつ譲り合う。
ちょっとずつ車間距離を開ける。
ちょっとずつスピードを落とす。
ほんのちょっとのことが集まれば事故は減る。
自動車メーカーも事故防止機能の開発を急ぐ。
トヨタ自動車は、ドライバーのまぶたが閉じていて衝突の可能性が高いと車が判断すれば、
自動ブレーキがかかるシステムを世界で始めて開発した。
2月、えみるさんは12回目の誕生日を迎えた。
桜が咲く頃には中学校の校門をくぐるはずだった。
真新しい制服に袖を通すはずだった。
「笑顔が満ちる子になって欲しい」、
そんな思いで風見さん夫妻は「えみる」と名付けた。
そんな親の宝物を、子どもの笑顔を、子どもの未来を、
大人が奪ってはいけない。
ハンドルを握るものとして、
交通死亡事故ゼロのという目標をあきらめてはいけない。