◇ 『輝ける瞬間(とき)』についての審議 |
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この番組は、30年以上前戦火のベトナムで、ヒューマンな写真を撮り続け、ピュリツアー賞を受賞したカメラマン、沢田教一の半生を描いたテレビドラマ。名古屋テレビが制作し、昨年12月15日全国ネットで放送した。
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いろいろな見方ができると思うが、戦争を描いたのではなく、一人のカメラマンの、生き方、考え方、行動の軌跡を、たまたま戦場を舞台に描いたドラマだと感じた。特に、夫婦の間の価値観のぶつかり合いが、ポイントになっていたと思う。 |
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最初は、功名心や名誉欲に駆られていた、沢田というカメラマンが、やがて、本当の人間の悩みとか、心の苦しみを感じとる人間に変わっていくところに感銘した。今、自由競争とか市場主義によって、強い者が生き残っていく時代だが、そうしたことへの反省があってもいいと考えさせられた。 |
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ピュリツアー賞を受賞した「安全への逃避」の写真の場面で、5人の家族を写した一枚の写真からもとの川の流れの場面に戻したところは、水面まで水に漬かった親子の、絶望と恐怖感が、ゆったりとしたテンポで描かれ、見ている者に迫ってくるものがあり感動した。 |
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事実はつくり話よりも力があると思うし影響力が大きい。沢田カメラマンの生き方に、感激するところも学ぶべきところもあった。彼の心の変化によって、写真も変化していくところが非常によく描かれていた。 |
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西田敏行が演ずるコロンビア大学教授が、節目節目で登場しいろいろと意見を述べる。若干説明的だとは思うが、そうわざとらしさもなく、沢田カメラマンの考え方が、見ている人に明確に伝わり、あれはあれで良かったのではないか。 |
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沢田の心の変化や成長を、教授の言葉で説明してしまうのは好ましくないのでは。画面の中で、あるいは大沢たかおの演技で、深い心の悩みとか迷いとかを表現すべきだと思う。 |
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ベトナム戦争を知る世代と、全く知らない世代では、見方が違うのではないか。もう少し時代背景を判りやすくした方が良かったと思う。今、世代間のギャップが大きいのが問題だと思っているが、こうした番組の中で、そうしたことを少しでも薄めていくことは非常に重要ではないか。 |
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沢田というカメラマンがどういう人だったのか、妻に反対されても、あえて危険なところへ出かけて行くエネルギーや決断が、どこから出てくるのかもうひとつ掴めなかった。また沢田自身、ベトナム戦争をどう捉えていたのかということもよく判らなかった。 |
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テレビドラマなので映画に比べ画面が明るい。戦闘シーンなどはいいが、夫婦の会話の場面になると、急に通常のドラマに引き戻される気がした。戦闘シーンなどは少し色を落とすなどの工夫があっても良かったのではないか。 |
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今の日本は変化を恐れ老成化してしまって、国全体が活気を無くしている印象を持っている。そこに、日本古来の言い方である「男の意地」といったものを、非常にエネルギッシュに自分の人生の中で発現していく男を描いたことは、そうした風潮に一石を投ずる意義があったと思う。 |
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日本人は、戦後50年余り、文字どおり自分の死を賭けて戦うとか、仕事をするという環境には無かった。これは歴史的にも国際的に見ても、むしろレアケースであって、平和慣れしている日本人が反省する意味でも、制作の意義は大いにあったんではないかと思う。
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大沢たかおはカメラマン沢田になりきって違和感がなく、ことに後半、悩みをかかえて頬のこけた姿に実在感があった。異国を背景にして、常に「おれはどこにいるのか」と問うているのは、今の時代の人々の心に共通するテーマだと感じた。
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以上のような意見が出された。
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