◇ 名古屋テレビ特集
「旅人打鈴(ナグネタリョン)~ある在日女性の帰郷」
についての審議 |
平成12年7月29日放送 |
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根無し草のような在日の立場は よく描かれていた。全体的にまとまった作品であるが、パンチ、刺激が乏しい。予定調和になりすぎている。望郷の念がテーマならばよくできた作品にはなっているが、ひっかかりがない。 |
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永住外国人地方参政権が議論されているいま、在日問題を考えるにはいいタイミングの番組だ。主人公が具体的に在日の抱える問題について語る場面があれば、もっと説得力のある作品になったと思う。 |
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一人芝居の説明が少なく、彼女が何を主張したいのかが見えない。従軍慰安婦を芝居のテーマに取り上げる必然性が理解できないので見る側が納得できない。在日の中途半端な存在はどこかで決着をつけなければ「旅人」という思いは三世、四世となっても解消されないのではないかと感じた。 |
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30分という放送時間の中にあれこれ詰め込みすぎた感じがした。主人公に関するストーリー、背景が紹介されていないので、女優としての生きがいがテーマなのか、韓国で、韓国語で公演するまでのプロセスが描きたいのか、望郷の念をまったく違った観点から描くことが主眼だったのか、それぞれが30分の中に混在していたためすっきりしなかった。 |
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司会の二人を生かす人の起用が必要と思う。司会者ふたりで相槌を打って番組が進行しているので、硬派の人とか、評論家とか、解説をする人が登場すると番組が生きてくるのでは。
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主人公の日本での暮らしぶり、家族や彼女の親の話やどんな所に住んでどういう職業なのかがぜんぜん出てこない。この作品は「人もの」と呼ばれるジャンルで人を描かないと訴える力が出ない。在日の立場は差別が背景に あるので、取材許否があったかもしれないが、それをカバーしないと作 品として成り立たない。 |
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ネットジェネレーションの実態は、普段、なかなか目にすることができない。テレビの画面で現実を見ることができたのは参考になった。 |
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CMの入れ方が無神経だ。番組の中で一番余韻があったところでCMが入った。映画館で急に電気が点いたような印象で、惜しい感じがした。 |
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以上のような意見が出されました。 |
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◇局側からは大塚敏郎ディレクターが「日本で生まれ育った彼女は自分は在日韓国人だと言う。なぜ日本人だと言わないのか、日本人と思わないのか、という疑問から取材に入った。在日としてのアイデンティティーは何かを追いかけた。家族、特に子供たちに、母親が韓国人であることが影響してくるのではないかということで、家族の取材はしない約束があった。そのことが根深い在日の問題を含んでおり、それを映像的に表現できなかった。芝居のテーマが慰安婦であり、これにも引っぱられた
部分もあった。もう一度整理して在日問題に取り組みたい。」 と説明をしました。 |