◇「SABUさぶ」について
5月の課題番組の「SABUさぶ」についてご意見を伺いました。この番組は名古屋テレビ開局40周年記念特別番組で、原作は山本周五郎、放送は5月14日午後8時から9時48分でした。江戸時代の職人の世界を舞台に、2人の若者の無償の友情を軸にして、他者を思いやることの大切さを描いた作品です。 |
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委員の主なご意見を紹介します。 |
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光と陰のコントラストなど映像が大変きれいで、TVの普通の時代劇との差を強烈に感じた。さぶ役の妻夫木聡の演技が良かった。その一方で人間が成長を遂げて行く過程の描き方が足りない。たとえば、女衒のロクが最後に人間味をみせるが何故なのか。伏線が描けていない。 |
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映像のフレームを巧く使っている。また最初のシーンと最後のシーンで傘が印象的に使われていた。他者のことを思うというのがこの作品のテーマだ。番組を見てそうしたメッセージを受け取って欲しいと感じるが、今の若い人たちにどこまでそうしたメッセージが届くかちょっと疑問だった。 |
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大変良く出来た作品だ。BGMのサイモンとガーファンクルの歌が良くあっていた。ちょっと残念なのは、殴り合いのシーンが少し多すぎる、と感じた点だ。 |
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原作のイメージが強く、最初はなかなか番組の世界に入って行けなかった。原作にないシーンだが、雨の中、おのぶがおすえに「あなたがやったのね」と迫るシーンは、良い手法だと思った。子役の2人は主人公にマッチしておらず、更にちょっと幼すぎると感じた。 |
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手間ひまかけた映像がTVに出るのは良いことだ。こうした企画は是非またやってもらいたい。プロットをつかみ難いのは原作にも問題があるが、その原作をカットせずに短縮したから、わからなくなったのではないか。いわば原作を全部詰め込もうとしすぎたのだ。今度同じような企画があるなら、いらないところを大胆にカットすることを心がけたほうが良い。 |
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TVでの番組宣伝がさまざまなバリエーションがあり、その意気に感動した。友情や信頼関係の描き方が間接的、遠まわし過ぎて、今の若い人にわかるかな、と思った。おのぶのナレーションはくどくなくて良かった。 |
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自分を大切にするのが現代の価値観だが、今は忘れがちな他人をひたすら思うという事をテーマにしたのは、良い感覚だ。 |
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35㎜フィルムのせいもあるが、山本周五郎の作品を良くここまで撮ったなあと感じた。TVは時が流れて行くことや人間が移ろって行くことを描くのが苦手だが、季節感や温度感などで巧く描いていた。2度ほど涙ぐんでしまうシーンがあった。いまメディア規制が盛んに言われているが、こうした質の高い作品を作りつづけて行くことが、そうした規制の動きをはねつける自主努力となるのだと思う。 |
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タイトルがアルファベットとひらがなを併記した「SABUさぶ」で、その意図がわからなかったが、作品を見て、原作の時代を、現代の心に響かせ、そして未来につなぐという視点があったからだろうとわかった。その狙いは巧くいっている。無駄な空間、余裕の空間を置くことで番組は厚みを増すが、前半はこうした所がなく、せっぱつまった感じだった。 |
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再放送を是非やってもらいたい。その際は深夜帯などで、CMなしでやるべきだ。そうしたことがメディア規制をはね返すことにつながる。 |
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以上のようなご意見でした。 |