メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2009年12月3日(木) 午前10時51分~11時45分

かえなきゃ、かわらない。

メインビジュアル
8月30日(日)、当選が決まり選挙事務所で 支持者らとバンザイする柴橋議員

 政権交代。選挙によって政権がかわったのは、戦後初めてのことだ。

 8月に行われた衆議院選挙では、全国各地の選挙区で激しい選挙戦の末、民主党の新人議員たちに自民党の大物議員が敗れた。そうした政権交代を象徴する選挙区のひとつが「岐阜1区」だ。

 民主党の柴橋正直衆院議員は、自民党の現職大臣であった野田聖子衆院議員を破り小選挙区で初当選した。野田議員は、比例代表で復活当選したものの、「自民王国・岐阜」で、圧倒的な知名度を誇った野田議員が、弱冠30歳の無名の新人に敗れた衝撃は大きかった。

 柴橋議員の選挙戦のキャッチコピーは「かえなきゃ、かわらない。」だ。4年前の郵政選挙での落選以来、毎日街頭に立って政権交代を訴え、自民党政治に対する有権者の不満の声に耳を傾け、地道な活動を続けてきた。

 当時は、郵政民営化反対から賛成に転じて、自民党に復党した野田議員と、小泉純一郎元総理に刺客として送り込まれた佐藤ゆかり前衆院議員との「女の戦い」が続いており、メディアは2人を追いかけまわし、小泉劇場から続く政治とメディアが作り出すドタバタ劇が続いていた。

 一方で柴橋議員の活動を伝えるメディアはほとんどなかったが、メ~テレは2年前から柴橋議員を継続的に取材してきた。そして今回、国会会期中の柴橋議員を密着取材する機会を得た。

 民主党政権を数の力で支える143人の新人議員たち。「小沢チルドレン」とも呼ばれ、小沢一郎幹事長による厳しい新人教育のもと、新人たちがメディアに露出することも制限されているという。政権発足から2ヵ月あまり、政権交代後の現実に直面するひとりの新人議員を追った。

  • 選挙戦最終日の8月29日(土)、最後のお願いで演説する柴橋議員

    選挙戦最終日の8月29日(土)、最後のお願いで演説する柴橋議員

  • 今年8月、選挙活動中の柴橋正直衆議院議員、演説風景

    今年8月、選挙活動中の柴橋正直衆議院議員、演説風景

スタッフのつぶやき
ディレクター:池田林太郎

 みなさん、政治家に対してどんなイメージをお持ちですか?普段は威張っているくせに選挙のときだけ頭を下げる?黒塗りの車で送り迎え?政治とお金の問題?いろいろあると思いますが、テレビなどで報道される政治家のイメージは、ネガティブなものが多いのではないでしょうか。

 その多くは自民党の古いタイプの大物政治家たちによって作られたものだと思います。政権交代は、そうした政治家の悪いイメージも変えてくれるかもしれません。

 本編の主人公である民主党の柴橋正直衆院議員は、代議士という重々しいイメージとはかけ離れた、「普通の感覚」を持った30歳の青年です。

 密着取材を続ける中で何度も、彼が「普通の感覚」を失わないように努力している姿を見ました。彼は議員パスがあるにもかかわらず、新幹線のグリーン車には乗らず一般の指定席をとりました。

 さらに「お金がもったいない」と言って、タクシーに乗らず地下鉄やバスで移動していました。政治にお金がかかるというのは、新人議員にとっても同じことで、少しでも節約しようとしていました。

 「庶民性」を過剰にアピールするのが、必ずしも良い政治家だとは思いませんが、彼は可能な範囲で普通の生活を続けようと努力しているのだと思います。国会議員という地位に決しておごらないようにと自らを戒めているのかもしれません。

 今回、民主党は143人の新人議員が当選しました。30歳の柴橋議員は、その中でも5番目に若い議員です。当然、若ければよいというものではありませんが、30代~40代という若い世代や女性の国会議員が増えたことは、働き盛りで税金をたくさん納めている世代、子育て世代などの意見が政治に反映されるようになるという期待感を持たせてくれます。

 問題は、民主党政権が、そうした国民の期待に応えることができるかどうかです。一方で国民も政治家に任せきりではいけないでしょう。かつての小泉劇場に対するような関心ではなく、政治に対する健全な関心を持つことが大事なのではないでしょうか。そして私たちメディアも、それに応える報道をしなければならないと思います。青年代議士誕生の瞬間を取材しながら、そんなことを考えました。