メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2008年8月7日(木)

寄りそって~笑う介護士たちの挑戦~

メインビジュアル

老人ホームで過ごすお年寄りと、そこで働く若い介護士たちの日常を追いました。袖山卓也さんは介護士たちのリーダー。老人ホームの運営を委ねられているマネージャーでもあり、今、全国で最も注目されている介護士の一人です。
袖山さんは「笑う介護」を理念として掲げています。その理念に共感した若者が、老人ホームでお年寄りに寄り沿い、介護に取り組んでいます。「笑うことが、生きる力になる。人生の終焉を迎えるお年寄りに、最後まで笑って過ごして欲しい。」袖山さんはそう考えています。袖山さんがマネージャーとなっている施設には、いつも笑い声が絶えません。しかし、死の現実がいつも身近にあります。末期のお年寄りを、ホームで暮らす皆さんと一緒に看取ったこともありました。認知症の奥さんを入所させざるをえなかった夫婦にもであいました。ここには、それぞれに人生のドラマがあります。
今回のこの企画は、介護の世界に新風を巻き起こす袖山さんと、若者たちの密着ドキュメントです。彼らがどんな姿勢でお年寄りに向きあっているのか。そして、介護施設が置かれている厳しい現実にどんな工夫で立ち向かおうとしているのか…。1年以上にわたる記録です。

スタッフのつぶやき
ディレクター:山ノ内聡子

核家族で育ち、お年寄りと触れ合う機会も特にないままここまで来てしまった私にとって、老人施設や介護士さんは正直言って近寄りがたい存在でした。ところが、訪ねたホームは文字どおり笑いで溢れていました。楽しそうにしているお年寄りと、冗談ばかり言っている介護士たち。三大介護といわれる食事、排泄、入浴介助の様子にも、これまで耳にしてきた悲惨さはまったく感じられません。介護士和田さんの成長をテーマに昨年の夏に1本の番組(民教協「いきいき!夢キラリ」)にするまでは、笑ってばかりの楽しい取材が続きました。
しかし、初めて彼らと出会ってから1年近くたつと、さすがに撮影がつらくなることが多くなりました。お年寄りとの別れ、ホームに入居せざるを得ないお年寄りの背景、介護士と施設を取り囲む厳しい現実。一体、彼らの原動力は何なのだろう、と思うほどでした。それは、彼らの兄貴分である袖山さんの影響であったり、お年寄りの笑顔であったり、使命感であったりするのですが、こんな中でも笑顔を絶やさず毎日を過ごす介護士さんたちに、本当に頭がさがりました。唯一の救いは、前の職場で理想と現実の間で葛藤してきた介護士たちが、「ここには同じ夢を持った仲間がいるから」「目標となる人がいるから」と、嬉しそうに話す姿でした。彼らが諦めることなく、ここにたどり着けて本当に良かった、と思えました。そう思えるほどに、彼らのホームには温かい空気が流れているし、未来も明るく見えました。
しかし、忘れてはいけないのは、今回私が出会った世界は、介護士たちの並々ならぬ努力と愛情で支えられているものであって、これが今の介護界の現状ではないということです。お年寄りが笑って過ごし、夢破れる介護士もいない、そんな場所ばかりになることを心から願っています。