メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2007年1月31日(水) 深夜1時47分~2時42分

ふるさとがダムに沈む日~徳山ダム50年目の結論~

メインビジュアル
ダムに沈んだ徳山村全景(2007年1月撮影)

 2006年9月25日、徳山ダムの試験湛水が始まった。旧村民にとってはふるさとを犠牲にした証がようやく見られることになるはずの日だった。しかし、旧村民たちには複雑な思いが渦巻いていた。いまだ解決されない共有地を巡る問題や、かつての集落跡まで付けられるはずだった付け替え道路が、いつの間にか中止になっていたことなど、旧村民の気持ちを裏切る出来事があったからである。補償金をもらって村を出たはずの旧住民の中には、ふるさと捨てがたく、今もかつての里に通い続ける人たちも多い。水にふるさとが沈むことが現実になって、あらためてふるさとが大きな存在であったことを実感している。
 こうした旧村民たちのふるさとへの思いを踏みにじるかのような、行政や水資源機構との対立。旧村民たちに対して「理解と解決に向けて努力する」とだけ言い続けながら、何一つ解決されないままに村は水に沈んでいく。巨大なこの公共事業は一体誰を幸せにするというのだろう。ダムに翻弄された村人たちの思いを切り取りながら、計画から50年目を迎えた徳山ダムの今を考えていく。
 あなたにとってふるさととは何ですか?

  • 水没する旧徳山村 本郷地区を撮影する

    水没する旧徳山村 本郷地区を撮影する

  • 水没する旧徳山村にて

    水没する旧徳山村にて

スタッフのつぶやき
ディレクター:川村真司

 2006年9月25日。構想から50年の歳月を経て、ついに徳山ダムの貯水(試験湛水―しけんたんすい―)が始まった。 徳山ダムは、現在に至るまで常にダムの是非が問われ続けている。 その中で意外にも旧徳山村の住民たちに対する補償などは、未だに続いている。
 全村離村という大きな犠牲をはらった住民たちにとって、いまやその代償となるのは、ダムの早期完成でもあるのだが、水が溜め始められることは、ふるさとが消滅することでもある。この旧住民たちの葛藤が頂点に達した時、それが、50年の歳月を迎えてようやく行われた試験湛水であった。 彼らがふるさとに浸水が始まるのを目の当たりにする人々の瞬間をカメラは静かに追う。 そこに映るダム建設という、山奥で行われた巨大公共事業にほんろうされ続けた人々の人生からは、戦後の経済至上主義の中、都市部が繁栄を続ける一方で、「ふるさと消失」といういわば本当の日本人の戦後史を垣間見ることができるはずである。