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放送内容

戦前、日本に渡った多くの朝鮮半島出身者がいた。あるものは強制連行され、また徴用されて日本にわたってきた。戦後も日本に暮らし続けた人たちは、差別と戦いながらも懸命に生きてきたことだろう。そんな彼らの中に、引き取り手もなく孤独に亡くなって行った人たちがいた。無縁仏として葬られた遺骨。そんな遺骨が粉砕処理されていたことが昨年分かった。名古屋市の社会福祉協議会が管理していた朝鮮半島出身者77体の遺骨である。本来、日本に暮らす外国籍の人々が亡くなれば、領事館なりに届け、身元確認と遺族への照会をしなければならないが、これらの遺骨はそれさえ無視された。
この問題を知った韓国民団と朝鮮総連が中心となって、遺族探しが始まった。 遺族とわかった韓国の9家族を取材班は調査団とともに訪ねた。突然知らされた家族の死。「なぜ遺族に知らせてくれなかったのか」「父は日本でどのように暮らし、どのように亡くなっていったのか」悔しさにくれる遺族たちがいた。手元に残された肉親からの手紙には祖国への望郷の念がつづられていた。
強制連行されていったに違いないからと補償を求める遺族や、遺骨を引き取りたいが墓を建てる経済的余裕もないと戸惑う遺族もいた。
8月、無縁仏となっていた遺骨の家族の夫婦が日本を訪れた。名古屋市の不手際に抗議しながらも、肉親がどのように日本で暮らし、亡くなって行ったのか、真相を知りたがった。受け入れがたい肉親の不幸な日本での暮らしが現実として突きつけられた。 これまで敵対関係にあった民団と総連。北朝鮮の拉致問題や、ミサイル発射実験、核実験に振り回されながらも、在日の問題として取り組む姜裕正(かんゆじょん)さん(民団)と金順愛きむすねさん(総連)が中心となって遺族への遺骨返還にむけて、活動は続く。同時に遺骨問題は在日としての彼らの歴史を深く考えさせることにもなっていく。
韓国の遺族
スタッフのつぶやき
ディレクター:岩本真紀
名古屋市昭和区の八事霊園。その一角に、引き取り手のない遺骨を安置する納骨堂「東山霊安殿」はある。現在2800体ほどの遺骨が安置されている。そのうち朝鮮半島出身者と思われるものがおよそ160体。人口比から見ればかなり多い。何故彼らが日本に来て、そして引き取り手も無く無縁仏となったのか?望郷、無念、寂寥…様々な思いを抱いて亡くなったことだろう。この遺骨を遺族へ、故郷へ返したいと活動する在日コリアンや日本人がいる。遺骨のたどった人生を知ることが、日本と朝鮮半島、日本人と在日がより深く理解しあうきっかけになる、そのための遺骨返還運動である。北朝鮮のミサイル発射や核実験、竹島、そして二つの在日団体の和解と白紙撤回など様々な問題が起こってもその歩みが止まることはなかった。自身がこれからも日本で生きていくために、遺骨に「故郷の青くて高い空の下で眠って欲しい」そんな在日コリアンの思いが少しでも伝わればと思う。