TOPIC
放送内容

名古屋に暮らすフィリピン人およそ6000人、不法滞在者を含めると一体どのくらいになるだろう。その8割は女性たちである。悪化するフィリピンの経済事情を背景に、家族の生活のため、日本に出稼ぎにやってきた多くのフィリピン人たち。名古屋はとりわけ多くの外国人が暮らす町であり、そのために「多文化共生社会」への模索を続けてきた。しかし、夢を求めて日本にやってきた外国人たちの生活には厳しい現実が待っていた。
日本人男性と結婚しながら、夫からの虐待に苦しむ人、就労や産まれた子どもの国籍の問題、そして子どもたちの就学などに悩む女性が増えてきた。不法滞在しなければならなくなった背景も様々だが、けして好きでそんな生き方を選んだわけではない。
そんな彼女たちの「駆け込み寺」といわれる場所、FMC「フィリピン人移住者センター」がある。 狭いアパートの一室に、憩いを求めて、あるいは相談のために多くのフィリピン人や、サポートするスタッフが集まっている。 運営の中心は石原バージさん。 多くのフィリピン人女性の日本で暮らす現実を目の当たりにして、この会を立ち上げた。
地域の中でフィリピン人たちが理解され,ともに幸せに暮らせる社会をめざした活動も石原バージさんがめざすものである。自ら日本人のコミュニティに溶け込む努力をしながらイベントや広報活動、地域のパトロール活動もこなす。
番組では日本へ出稼ぎに出ざるを得ないフィリピンの事情を紹介しながら、新しいフィリピン人移住者たちの試みも紹介する。
今年は日比友好年、両国の自由貿易協定(FTA)も調印され、介護士や看護師などの仕事も許されることになった。フィリピンでのホームヘルパー講座も大盛況。フィリピン人移住者の新たな可能性が広がっていく。
名古屋で暮らす フィリピン人たちの演劇
フィリピンパヤタスの ゴミの山で暮らす子どもたち
スタッフのつぶやき
ディレクター:岩本真紀
子供の父親が逃げ出しても「旦那は逃げちゃった。でもこの子の顔を見れば生きていける。人生まだまだこれから」と笑い飛ばす。水商売しか出来ないフィリピン人とさげすむ日本人には「フィリピン人は介護の仕事だって何だって出来る!」と立ち向かう。夏祭りにはフィリピン流盆踊りを披露する。逆境に負けない明るさ。根性。逞しさ。そして家族を思う心の深さ。この1年そんな彼女たちのバイタリティに圧倒され続けた。
日本で生きていくと決めたフィリピンの女性たちは、自分たちも、そして周りの日本社会も変えていこうと奔走する。自分の故郷を誇りに思いながら異国で生きていくために、そして日本で生まれたJFC(ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン)が両国の架け橋となる幸せな人生を送るために。圧巻はフィリピンの400年に渡る植民地の歴史から、現在の日本との関係までを、音楽と踊りを交えた演劇に仕上げたところ。まるっきり素人の在日フィリピン人たちがすばらしい舞台を繰り広げたのだ。「だって皆、元エンターテイナーだもん。歌も踊りも上手いわよ!」…そりゃそうだ。
これからフィリピン人だけでなく様々な国から来た移住外国人が増えていくだろう。異なった文化を持つ人々たちからたくさんの刺激を受け、それを咀嚼して自分に取り込んでいく。より楽しく豊かな地域社会への道が見えてくる。