メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2006年3月1日(水) 25時43分~

きっとよくなる。かならず良くなる。~がんと闘う仲間たち~

メインビジュアル
患者とメール交換をする広野さん

 「金つなぎ」。ひび割れた茶碗は二度と戻らない。しかし、金を使ってひびを埋めつなぐ事で器はあらたな輝きを放ちます。そんな金継ぎの技に思いを託した会があります。
「金つなぎの会」…全国に1600人あまりの会員(海外の会員も含む)を持つ <がん患者の自助努力の会>です。自らをひび割れた茶碗になぞらえ、それを繕う金を仲間や家族、医療などに託したものです。
  設立されて今年で10年。20人ほどでスタートした会は、これまでに多くの仲間たちががんに倒れ、そして新しい仲間が次々と加わってきました。がん患者の会そのものはけして珍しい組織ではありませんが、この会は代表の広野光子さん(64)の強いリーダーシップにより、がん患者同士がみずから運営し、HPによるネットワークを作り上げ活動する団体です。いつも笑顔を絶やさず前向きに生きることをモットーにした会は、今年10年目を記念して、熊野に大花火を打ち上げました。亡くなって行った仲間たちへの鎮魂と生きていくものへの安寧を祈って神々が棲むという熊野の海に捧げた花火です。
  がん患者、しかも今も抗がん治療と戦っていることさえ気づかせない元気さの裏にのぞかせる孤独で絶望的な体験を私たちは知ることになります。
  がんを体験したからこそ知る<生きることと死ぬことの意味><希望こそが癌と戦うエネルギーのすべてであること><仲間と家族と支えあい闘う病であること>。いまやがんで亡くなる人々は全体の3分の1になってしまったほど珍しい病ではありませんし、すべてが絶望的な病気であることもなくなってきました。しかし、がんを宣告されれば否が応でも「死」と向き合う苦しさと戦わなければならないのは事実です。少しでも多くのがん患者たちに生きる勇気と夢と希望を与えられる番組にできればと思っています。

  • がん 仙人風呂

    がん 仙人風呂

  • “癌と戦う戦闘服”の ピンクの法被をきてお花

    “癌と戦う戦闘服”の ピンクの法被をきてお花

スタッフのつぶやき
ディレクター:海老名敏宏

こんなに明るいがん患者がいることを取材を通して知った以上、紹介しないわけにはいきません。しかし同時に、仲間たちと明るく前向きにがんを語る人たちが、はじめからそうであったわけではありません。
がんを患うことは即,死と向き合うことだと思われた時代がありました。 確かに癌を宣告されれば、今も患者にとっては自分の生(死)と向き合うことになるのは変わりません。がんを宣告されてもがき苦しみ、つらい抗がん治療と戦ってきた人生があります。彼女たちは会を主宰する広野光子さんを通して、同じ戦いを続ける仲間たちと出会うことで、励ましあい、そして死生観を育ててきました。こうして救われていくものがたくさんあることに気づかされます。がんは人生を考えさせる機会となる病です。医療現場でもようやく、そのことに気づき始めましたが、まだまだ充分ではありません。がん告知(余命告知)の問題、そこにある生きる権利、生かされる権利と自分の病気を知る権利との葛藤など、がんを体験しなければ語れない問題があります。それを支える家族の問題とも出会うことになります。取材中に亡くなられた人もいましたが、心情的には厳しい取材でも、伝えるべきことを学びました。癌を宣告されて絶望する人生から病友が集まって前向きに生きようとする人たち、そのきっかけを作った人たちから大きな勇気と希望をもらいたい、と思います。

◆金つなぎHP
http://www.e-net.or.jp/user/yokunaru/