メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2005年10月26日(水) 25時40分~26時35分

笑顔を交わせたら~翔君と交流学級~

メインビジュアル
翔君と交流学級

 今泉翔君(13歳)は、愛知県豊田市に家族5人で暮らしています。
翔君はダウン症です。運動面でも精神面でも発達が遅いことが特徴で、ダウン症の子どもの成長にはたくさんの時間とたくさんの愛情が必要です。
 取材は去年の3月に始まりました。当時、地元の小学校の6年生だった翔君は特殊学級に籍を置き、交流学級で友達と触れ合う毎日を送っていました。小学校時代は、ゆるやかな時間の中でほのぼのと過ぎて行きました。
しかし中学校の宿泊学習で、翔君と友だちのひとりが初めてぶつかります。悩み葛藤した末、心からの笑顔で和解した二人。「心の交流」を経験した翔君は晴れやかな表情で言いました。「学校大好き。友達いっぱい。」番組では、翔君の成長に悩む家族の姿を織り交ぜながら、翔君と友だちの「心」の動きを追います。

  • 今泉翔君

    今泉翔君

  • 運動会の1シーン

    運動会の1シーン

スタッフのつぶやき
ディレクター:安藤則子

 これは、愛知県豊田市在住の今泉翔君(13歳)の成長を、小学校卒業、中学校入学という節目をまたいで、1年余りにわたって見つめたドキュメンタリーです。
翔君はダウン症です。ダウン症は正式にはダウン症候群。21番目の染色体がひとつ多いことによる障害の総称です。翔君は学校では特別支援の教室で学び、同学年の普通学級を交流のクラスに持っています。番組に大きなドラマはありません。有名な人も偉大な人も出てきません。大発見もありません。『普通』の子どもたちが、『普通』に成長する姿が登場するだけです。にもかかわらず、私は子どもたちに接して、目から鱗、心から錆びが落ちる気持ちがしました。
 「勝ち組」「負け組み」という言葉に振り回される大人がいる一方で、翔君と交流学級の仲間は、「勝ち負け」「自分さえよければ良い」という価値観に流されず、「本当に大切なもの」を日々のふれあいの中でつかんでいます。
 中学校の宿泊学習で、翔君たち1年生はそろって16キロの行進をしました。途中、翔君は歩けなくなります。小学校からの友人の少女が、翔君を背負って山道を歩きました。班のメンバーも、誰ひとり翔君を置いて先に進もうとはしません。時間が決められ、順位を競う学校生活の中で、翔君と子どもたちは葛藤した末に、許しあい励ましあって共に前進していく喜びを得たようです。最近、翔君は、「おともだち」という言葉を繰り返すようになりました。友達づきあいの中で、心が少し成長しました。
両親へのラストインタビューでお父さんは言いました。
「これまで自分は、息子を見くびっていた。息子を理解していなかったのは自分だ。翔の友達に教えられた。」
 「『障害』は心を隔てる壁、友情を隔てる障害物にはなりえない。いっしょうけんめいぶつかり、心からの笑顔を交わしあう中で、心は育まれていく」と、私は翔君と子どもたちに教えられました。
 私達は、いえ私は、子どもたちに恥じない生き方をしているだろうか、報道者として大切なことを確かに伝える力をもっているだろうかと、自問する毎日です。