メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2005年5月4日(水) 25時47分~26時42分

密着!ブータン館の叡智~ヒマラヤ・祈りとやすらぎの国から~

メインビジュアル
手作りのブータンパビリオン

「自然の叡智」をテーマに愛・地球博が始まった。パビリオンの多くは映像やハイテク・ショーを競い、外国館も物販や観光紹介が目立つ。そんな中で、職人たちが機械や動力を一切使わず、愚直に作り上げたパビリオンがある。ブータン館だ。ブータンからやって来た職人は、母国の木材のほか土から作った絵の具まですべて自然のものを使い、チェーンソーなども持たないため構造物はすべて人力で切り組み立てた。
人口70万人の小国ブータンは、国民1人あたりの所得が年間7万円ほどで日本の50分の1。国連の位置付けでは25カ国ほどある最貧国とされる。しかし「経済的豊かさ」より「精神的な幸福」を重視。喫煙を禁じ、民族衣装の着用を義務づけ、国土の60%の森林保全を打ち出すなど、近年は異色の政策を打ち出し注目を浴びている。
番組では、ブータンの職人が豊田市の禅寺に泊まり日本の慣習に戸惑いながらパビリオンを作っていく様子を、ハプニングを交えながら紹介し、また50年前の日本を思い起こさせるようなブータンの風土や生活を交え、今回の万博のテーマ「自然の叡智」を改めて考える。

  • 職人がすべて手作業で制作した

    職人がすべて手作業で制作した

  • ヒマラヤの山国・ブータンの寺院

    ヒマラヤの山国・ブータンの寺院

スタッフのつぶやき
ディレクター:本井宏人

 「自然の叡智」をメーンテーマにすえた愛・地球博が始まりました。しかし人気館が競うのは、ハイテク映像や楽しい乗り物ばかりで、まるでテーマ・パークです。 そんな疑問の中で、ブータンの職人たちが機械や電動工具さえ使わずに、パビリオンを作るらしいと聞いて、取材を始めました。
 2月6日に来日した職人8人が、まず向かった先は、愛知県豊田市のお寺です。滞在費節約のため、仏教国のよしみでお寺に居そうろうしながら、ブータン館建築にあたるのです。しかしすべてが手作業なうえ、のんびりした国民性ゆえ、建築ははかどりません。一緒に作業する日本業者と衝突も起こります。ブータン館は、開幕までに完成するのでしょうか。はらはらしながら、取材を続けました。
  ブータンはヒマラヤ山脈のふもとに位置する人口約70万人の小国です。パビリオン建築取材の間に、ブータンの現地ロケも行いました。彼らの国が目指すのは、経済的豊かさより心の幸福です。輪廻転生の仏教思想から、自然は自分たちの命の源だと信じ、必要以上に自然を傷つけません。開発からは取り残されましたが、暮らしに自然を取り込み、家族や地域を大切にする文化は、私たち日本人が失いかけているものだとも実感しました。
  番組では、現地ロケ期間をのぞく2カ月間、職人たちに密着し、日本のハイテク文明に驚く姿などを交えながら、最も愚直に作られたパビリオンができる様子を追いました。そして側面から彼らを支えた滞在先のお寺の住職一家との交流と別れ。ブータン館は「自然の叡智」や草の根の国際交流を、最も体現したパビリオンといえるかもしれません。