TOPIC
放送内容

南北会談やサッカーワールドカップ、拉致問題を認めた日朝会談、そして空前の韓流ブーム・・・日本と朝鮮半島の関係はこのところ目まぐるしく変わってきた。そんな中、「朝鮮学校」は朝鮮民族としての教育を戦後一貫して続けてきた。いったいどんな生徒たちが、どんな生活を送っているのか?「これからも日本が生活の基盤」だという彼らが、就職や進学、学費の面などで差別のあるこの学校に通うのは何故か? 「北朝鮮」=悪のイメージの今、何を考えて民族教育を受けているのだろうか?
愛知県豊明市には45年の歴史を持つ朝鮮中学校がある。朝鮮籍、韓国籍、日本籍など様々な国籍の中・高校生が4百人以上通っている。高級学校は中部地方唯一で、遠くは石川や福井からも進学してくる。実家から通う事が出来ない生徒は、学校内にある寄宿舎で3年間の生活を送る。現在寄宿生は43人。ここでは洗濯を自分でやるのはもちろんのこと、掃除や朝昼晩の食事手伝いも交代制やらなくてはいけない。寄宿舎生活に希望と不安を抱えた新一年生、そして朝鮮高校を卒業することで、はじめて日本社会に出て行く三年生。「朝鮮民族」として生きることを選んだ彼らの1年間を追う。愛知県の朝鮮高校に通う生徒の素顔を通じて「民族」とは「故郷」とは何かを考えていく。
卒業式
謝恩会
スタッフのつぶやき
ディレクター:岩本真紀
日本を席巻中の韓流についてある在日コリアン家族に聞いた。4歳で日本に渡ってきた1世は「日本人が朝鮮人をカッコいいという時代が来るなんて隔世の感」。2世の娘は「子供の幼稚園で自分が在日であると簡単に言えるようになった。」と言った。
在日コリアンが集まるスポーツ交流会、名古屋グランパスに移籍したばかりの北朝鮮代表・安英学選手が出席していた。そこに登場した来賓の日本人の言葉。「先日のW杯日本対北朝鮮。北朝鮮代表の在日選手二人の姿に感動した。まるで日本人かと思う位マナーも良くて…」。
韓流やW杯、そして拉致問題。目まぐるしく変わる日本と朝鮮半島の関係。そのたびに翻弄されているであろう、在日コリアンの子供たちの心を知りたいと、去年の春、愛知県豊明市にある朝鮮高級学校(愛知朝鮮高校)の取材を始めた。
翻弄?とんでもない。彼らは勝手な私の思い込みをすっかり覆してくれた。「日本に住んでいる朝鮮民族の自分には居場所がないのか?」「朝鮮人でも韓国人でもない、ここに生まれここで死んでいく自分がやるべきことは何か?」それぞれに考え悩みながらも、めちゃくちゃ元気に高校生活を謳歌していた。代々受け継いできた朝鮮半島の伝統を学びながら、日本の風習も韓国の文化も身に着けている。子供といってもおかしくない年頃の学生たちが人生と正面から向き合うことを教えてくれた。分かっているつもりでいても「民族教育」や「在日」に対して知らないことが多かった。
知らないことが差別や偏見や恐怖を生む。この番組が在日や朝鮮半島のことに少しでも興味を持つきっかけになればと思う。