メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2004年9月11日(土) 13時00分~13時55分

わたしたちは戦争を見たか

メインビジュアル
バグダッドを行く米軍の戦車

 3年前の9月11日。アメリカ・ニューヨークの世界貿易センタービルへ突っ込んだ2機の航空機の映像は世界中に大きな衝撃を与えた。その後、世界は「イラク戦争」への道をまっしぐらに進んだ。しかし私たちは「戦争」を見たのだろうか?
  かつて戦場を取材したカメラマンたちは「今の戦争報道には戦争臭がない」「戦場に横たわる死体がない戦場映像は人々を戦争という現実から遠ざけている」と指摘する。
  イラク戦争では大手メディアが一斉にバクダッドを離れ、フリージャーナリストの活躍の場となった。フリージャーナリストらは今や日本のメディアは「自主規制」によって放送できないものが多すぎると指摘する。それはなぜなのか?今回のイラク戦争では「人質事件」「拘束事件」も起きた。そのとき取材者から取材される側になったジャーナリストも日本のメディアへの疑問を呈する。
  番組ではテレビや新聞が伝えたもの、伝えなかったものを検証し、市民は「戦争」を見ることができたのか。「戦争」はどう伝えられたのかを考える。

※この番組は戦争報道のあり方を検証する番組です。番組を制作・構成する上で、必要であると判断し一部で、戦傷者・流血などの映像を使用しています。児童など刺激的な映像に対し配慮が必要な方は、視聴にあたってご注意ください。

  • 取材する各国のテレビ取材班

    取材する各国のテレビ取材班

  • 現地からリポートする アジアプレス綿井健陽

    現地からリポートする アジアプレス綿井健陽

スタッフのつぶやき
ディレクター:土江真樹子

 これは私自身も持ち続けた疑問、心の中にいつも引っかかる「なにか」だ。 私自身の経験であるが2001年9月11日、沖縄に住んでいた私は台風が接近する中、米軍基地の取材へと向かった。私たちに銃口を向ける米兵。今まで感じたことがないほどの緊張感だった。それから3年、世界は戦争へと突入して行ったように感じる。
  2年前のイラク戦争開戦から多くの変化が起こった。太平洋戦争後日本が初めて体験する戦争への関与。人質事件、フリーランスの活躍、自衛隊の派遣。
  名古屋へ来てからイラク戦争を検証、報告する講演会を何度か取材したがそのたびに、「新聞、テレビの戦争報道は信用できない。十分ではない」という市民の声を何度も聞いた。視聴者はもっと情報を求めている。今では戦争を知らない世代が主流となり戦争への興味が薄れていると言われるが、そこでは「何が起こっているのか知りたい」「戦場とは?」と情報を求める人たちが数多くいた。
  今回の番組では放送や新聞紙面でタブーとされる死体、流血の映像を使用している。ショッキングな映像を見せることだけが戦争を伝えるわけではないが「爆撃される側」には死体があり腐敗臭が漂っているはずだ。いくらピンポイントで攻撃していても市民の被害がないわけではない。戦争では軍人だけが死ぬわけではない。市民にはもっと多くの被害が出ている。これは私が沖縄で学んだことの1つだった。
  テレビは心の準備のない人たちにも映像を見せつける。そういう人たちにとって死体や戦場の悲惨さは受け入れられるものではないかもしれない。だが、今回の番組では、あえて「戦争臭」、物が焼け焦げたり、腐敗する臭いを伝えたい。そして、「戦争」を見ること、知ることについて考えて欲しいと願っている。