メ~テレ ドキュメンタリー

メ~テレ制作の本格派ドキュメンタリー

TOPIC
放送内容

メ~テレドキュメント
2004年5月17日(月) 25時18分 ハイビジョン番組

憂貴の翼~心を描く少年の世界~

メインビジュアル
磯貝憂貴くん 12歳

「心に翼を生やした少年・憂貴(12)に、社会はどんな風に映っているのだろうか…」
愛知県碧南市に住む磯貝憂貴君(12歳)は、岡崎盲学校に通う中学1年生です。愛知小児保健医療センターで、「後頭葉症候群」と診断されました。視知覚を司る後頭葉に小さな萎縮があるため、物の見え方に障害があり学習面や注意に多少の問題を持っています。言葉で説明することも苦手です。お母さんは、どうやったら息子の能力を引き出し、伸ばせるのか試行錯誤の子育てをしてきました。そんな中で見つけたものが「いいもの探し」。視知覚の訓練のために、何気ない風景の中に好きなものを探し写真に撮る遊びです。憂貴君にとって「いいもの」とは、小さな虫だったり、雲だったり、電車だったり欠けた貝殻だったり・・・・
 
「障害を持っていても自由なこころが描く彼の「絵」は、私たちにいろんなことを教えてくれます。」
3年生の時、宿題に出た絵日記をきっかけに、「いいもの」「好きなもの」を、憂貴君は絵に描き始めました。現れたのは、ファンタジーの世界です。絵は、言葉に代わって、憂貴君の中に、豊かな世界があることを周囲に教えてくれました。天高く笑っているお月様、桜吹雪を吐いて走る機関車、洗濯バサミの魚・・・絵に登場する星や動物たちは、みな微笑んでいます。そして、憂貴君自身も羽をつけて、楽しそうに飛び回っている姿がそこに描かれます。彼の絵に多くの人が感動します。

この春、憂貴君は中学生になりました。お母さんの「がんばり」も転換期を迎えました。成長する子供との間に微妙な葛藤が生まれます。憂貴君の絵にも大きな変化が現れてきます。子どもの自立を願い、子離れしなければならないという思いと一抹の淋しさ。番組は、学校で見せる憂貴君の表情や、絵が結んでいく交流などを交え、成長の一場面をとらえたいと思っています。そして、憂貴君の表現を大切にするとはどういうことかを考え、子どもの持つ素敵さ、可能性を育んでいく必要性を訴えます。

ナレーター 戸田恵子

  • 制作中の憂貴くん

    制作中の憂貴くん

  • 憂貴くんが描いた絵「夢のひよこ」

    憂貴くんが描いた絵「夢のひよこ」

スタッフのつぶやき
ディレクター:安藤則子

 番組の主人公は磯貝憂貴君(十二歳)です。視知覚とADD(注意欠陥の障害)など発達に障害を持っていて、岡崎盲学校に通っています。お母さんは手探りで、息子の子育てをしてきました。「何か最後までやり遂げられることを見つけよう」と模索する中で、憂貴君は絵と出会います。
 『天高く笑っているお月様』『おなかを赤い電車が走るひよこ』『洗濯バサミの魚』など、憂貴君の絵はファンタジーにあふれています。登場者は皆笑っています。羽が生えた作者自身も必ず登場します。
 優しい微笑みに満ちた絵・・・
実は、その陰に憂貴君自身の痛みや家族の葛藤があることを知ったのは、取材の半ばでした。バリアフリーなどと軽々しく言えない現実にぶつかり、取材はこれまで経験したことが無いほどに難航しました。
 しかし取材班は憂貴君を障害児として見つめてきたわけではありません。絵や写真撮影が驚くほどうまいことを除けば、彼はどこにでもいる少年の一人です。私たちは自分の子ども時代を思い出しながら、この8ヶ月向き合ってきました。
  憂貴君の絵から学ぶことが多い取材となりました。