2010年。日本が朝鮮を併合してからちょうど100年。
日本の文化を一方的に押し付けた時代、日本と朝鮮半島の交流が閉ざされた時代、
そして怒涛の様な人と情報が交流する現在。
様々な時代を経てきた二つの国。
その変化を“大衆音楽”を通して見つめてきた在日二世がいる。
名古屋に住む朴燦鎬(パクチャンホ)さん、67歳。
焼肉店を営む傍ら、本国では入手困難な音楽資料を掘り起こし、韓国の大衆歌謡史の研究を続けてきた。
そして2009年3月、1884年から1980年までの大衆歌謡史の本を、韓国で出版した。
全2巻2300曲に言及した、本国でもはじめての系統だった「歌謡通史」だ。
朴さんは古いSPレコードを手にしたとき、「この歌を歌った人はどんな人で、
そして歌を聴いた人々はどんな思いだっただろう?」と当時に思いを馳せるという。
確かに大衆歌謡は時代を映す鏡である。
朴燦鎬さんが光を当てた“韓国大衆歌謡”にも、時々の人々の思いと、為政者の思いが表れている。
植民地時代に、ある歌を歌ったことで、今も糾弾されている韓国人歌手、
日本で大ヒットした「釜山港に帰れ」の詞が出来上がるまでの政治的思惑など、歌にまつわる話は尽きない。
時が経ち、今では年間464万人の人が両国を行き来している。
韓国ではジャニーズのコンサートで数万人が熱狂し、J-POPアーティストの写真集が本屋さんで人気を得ている。
一方日本では、ガールズグループはじめK-POPアーティストが怒涛のように来日、音楽市場を席巻している状態。
そしてファンたちはそれぞれ互いの国の言葉を覚え、相手の文化、心を理解しようとし始めている。
この番組では、100年間の両国の大衆音楽の系譜をたどることで、
当時の人々の思いに触れ、時代の空気を感じ、そしてこれからの両国の関係を展望するきっかけを作り出したい。
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