かつて、オートバイレースのチャンピオンとして国内外で活躍した水谷勝さん60歳(愛知県津島市在住)。
還暦を迎えたいまでも、日本最大級のオートバイレース、「鈴鹿8時間耐久ロードレース」に出場を続けている。
しかし、史上最高齢のレーサーとなったいまでは勝利に陶酔することなど到底かなわない。
にも関わらず、プライドを捨てて「鈴鹿8耐」に参加するのには、別の理由があった。
それは、「オートバイによる社会貢献」。それが9年前から水谷が始めた「風の会」だ。
このボランティア活動は華々しいレースイベントである「8耐」のスケジュールの合間を縫って、レーシングコース上でひっそりとおこなわれている。
身体の自由がきかない身体に障害をもつひとたちをプロライダーたちがバイクの後部座席に乗せ、「8耐」の舞台となるレーシングコースを、この時ばかりはゆっくりと走らせ、風を感じてもらおうというものだ。
この「風の会」を毎年楽しみに埼玉県所沢市から家族でやってくる小昏康之(こぐれやすゆき)さん(45歳)は、身体の筋力が衰えていく病と闘っている。
元々、オートバイが好きで、しかも水谷さんの大ファンであることから、「風の会」で水谷が操るオートバイの後部席は小昏さんの指定席になっている。
小昏さんは水谷さんの走りを励みにしてリハビリを続け、また、水谷さんはファンのために走り続ける覚悟を決める。
オートバイによる社会貢献に目覚めた元チャンピオンと障害者との心の交流を描く。
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