名張毒ぶどう酒事件の再審開始決定が5月25日に取り消されました。
当日の朝、私たちドキュメンタリーの取材班は奥西勝死刑囚の特別面会人の稲生昌三さんと名古屋高等裁判所に向かいました。稲生さんは、開始決定と同時に死刑囚の釈放を求める予定で、いつもより気持ちが高ぶった様子でした。裁判所前でバンザイするのが悲願でした。
私たちは、刑事訴訟法336条「疑わしきは被告人の利益に」に忠実ならば、1審判決の通り無罪になるのではないかと思っていました。番組を構成するにあたり、証言や証拠を並べてみると、なんら裏付けのない自白のみで死刑判決が維持されていることが明らかになるからです。しかし、再審の扉は開きませんでした。2006年に続き、今回、再審開始決定を取り消した裁判官の判断は、科学的には推測の域を出ないものです。果たして看過して良いものでしょうか。
これは、奥西死刑囚だけの問題ではなく、同じ司法の下のある私たちの身に降りかかる問題です。私たちメディアが注視しなければならない問題でもあります。
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