国際原子力事象評価尺度INESで最も深刻な過酷事故「レベル7」に該当するのは、1986年4月のチェルノブイリ原発事故と2011年3月の福島第一原子力発電所事故です。
番組は、原発から約40km離れた福島県飯舘村と約80km離れたウクライナのナロジチ地区での取材をもとに、一度原発事故が起きたらどんな事態に人々が巻き込まれるのかを見つめました。
三重県津市で農業を再開した村上真平さん夫婦は、メルトダウンをいち早く察知し、2011年3月12日に飯舘村から避難しました。しかし政府は事実をすみやかに公表せず、村を計画的避難区域に指定するまでに1ヵ月を要しました。住民は避けなくてはならない放射性ヨウ素に晒され続けたのです。京都大学原子炉実験所の今中哲二助教らグループは定期的に村の汚染実態を調べ、村民の被曝線量を推定しました。原発由来のがん死が少なくとも2~17件起きる可能性があると今中さんはみています。
原発事故にふるさとを奪われた心の傷も深く、村上さんの妻は「心から笑えない」日々を送ってきました。福島市の仮設住宅に避難した酒井マサ子さんは、山の恵みを享受する喜びを失くし眠れぬ夜を迎え続けています。
汚染された食べ物による内部被曝のリスクが今なお続くチェルノブイリの汚染地域。幼稚園では、不健康な子どもが増えているといいます。放射線医学研究所のステパノバ医師は、内部被曝により血球数が減少し免疫力低下していると訴えています。
飯舘村を汚したのは雪でした。ナロジチ地区を汚したのは風でした。気象条件によっては、原発所在地以外でも同じ悲劇が起こる事を2つの事故は警告しています。
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