- 159回 -

2015年5月26日(火) 午前9:55~10:51

レベル1~御嶽山・届かなかった警告~

噴煙を上げる御嶽山
 御嶽山噴火から8ヶ月。死者57人、行方不明者6人という戦後最悪の被害が出たのはなぜか?どうすれば、被害を少なく出来たのか。
 気象庁は「レベル1」を「平常」から「活火山であることに留意」に変更した。御嶽山噴火を受けて警戒の表現を改めたことになる。メ~テレは発生当時から「レベル1」に注目して取材をすすめてきた。
 噴火の2週間あまり前に1日に50回以上の火山性地震が観測された。
しかし、気象庁は、火山性微動や低周波振動の関係から噴火警戒レベルを1のままにしていた。その根拠は数少ない過去の経験だった。加えて相談を受けた専門家は「(噴火当時)山にあれだけの人がいるとは…」と悔やむ。当日は、秋空の絶好の登山日和、しかし、そんなことに思いが至らなった。
 登山者の中には、「レベル1」=「平常」を確認してから登った人もいた。
「レベル1」が生んだ犠牲は大きかった。また、気象庁はレベルを1にしたまま、「解説情報」で御嶽山の異常を伝えようとした。しかし、地元の長野県木曽町や王滝村は「レベル1」であることを根拠に、登山者に御嶽山の異常を伝えることはしなかった。また、メ~テレほか一部のメディアも“御嶽山の異常”を報じることができなかった。報道機関も専門家も気象庁も活火山である御嶽山に対して油断があった。番組では、我々の報道機関としての責任も問う。
 箱根山では、「レベル1」が「レベル2」に引き上げられ、火口付近の立ち入り規制が続く。この早い対応は、「御嶽山」の教訓か。
 番組では、引き続き「レベル1」にこだわり、その導入時の経緯や、なぜ警告が届かなかったのか、取材を重ね、検証する。
スタッフのつぶやき
高羽佑輔

 2014年9月27日、御嶽山噴火の一報を受けて現場に向かう前、私は非常に楽観的でした。「登山している方々は役場の人の指示に従って、無事に避難しているだろう」
勝手に火山防災に甘い幻想を抱き、まさか戦後最悪の被害になるとは予想していませんでした。
「なぜ、戦後最悪の被害は生まれたのか」この問いからスタートした取材を進める中で、火山防災の脆弱さが至るところに見えてきました。
日々、捜索により山頂付近で行方不明者が発見される中で、 “予兆”とされる約2週間前の火山性地震の存在を知った時は、愕然としました。登山者が頼っていたのは、噴火警戒レベル1・“平常”。「全然、平常ではなかったんだ」今回取材したご遺族の思いと同じです。
 あの時、御嶽山に数多くの報道陣が集まり、取材をしていました。8カ月が経とうとしていますが、噴火した日の夜、山に登っている不明者の情報を求めて、役場に来ていた家族の不安げな表情を思い出すと、今でも胸をえぐられるような思いになります。
 私がするべきことは、噴火に巻き込まれ、犠牲となった方を悼むこと。そして、次に日本のどこかの火山が噴火した時、きちんとした防災行動がとられているような報道を続けること。
 そのために御嶽山の噴火の検証をしていきたいと思います。