五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。
2024/08/25
能登半島地震から半年以上が経ちました。全国の市民団体は、今も被災地支援を続けています。三重県の「みえ防災市民会議」もそのひとつで、3月末に行った炊き出しでは新しい試みを行い、被災者から喜ばれました。今回は、そのノウハウ・工夫を紹介します。
「みえ防災市民会議」が炊き出しで最も注意しているのは「衛生面」です。
炊き出しと言うと単に「大人数分の食料を作ればいい」と思いがちですが、衛生面について厳しいルールがあります。
日本家政学会が作成した「炊き出し衛生マニュアル」には、準備から後片付けまでの注意点がまとめられています。
集団食中毒を起こさないために、スタッフ(調理者だけでなく)、調理器具、食材の保存、調理、提供(配膳)、ゴミの処理について詳しく説明されています。
そして、もう一つ「被災者のニーズを聞くこと」が重要としています。「自分たち(支援団体)がやりたいことをやってはいけない」と言います。
例えば、ある避難所に日替わりで全国から支援団体が来て、炊き出しを行うとします。事前に調整をしないと、メニューが毎日カレーに…などと、なりがちです。
これには事前調整の有無のほかに、様々な制約から炊き出しで提供できるメニューに限りがあることも原因の一つです。
そこで3月の炊き出しでは、三重県松阪市の食品メーカーの「冷凍のお惣菜」を持って行きました。
調理済みの冷凍のお惣菜を発泡スチロールの保冷箱に入れて運びました。
ご飯はパックご飯です。現地では湯せんするだけで、まな板で食材を切る・大鍋での調理など行いませんでした。
一見手抜きに見えますが、そうではありません。「おうちのご飯・おかずが食べたい」という、被災者からのリクエストに応えようと考え出したそうです。
「何か役に立ちたい」という食品メーカーの社長さんの熱い思いもありました。
持ち込んだ冷凍食品のお惣菜はシッカリしたものでした。介護施設、給食センター、スーパーなどに提供しているもので「真空調理」が特徴です。
「真空調理」は、適度に柔らかく、味は濃くも薄くもなく仕上がり、保存期間が長いのが特徴です。メニューも800以上あり、メニューに広がりを出せます。(私も体験会で実食。とても美味しいおうちご飯でした。)
現地では温めて配膳するだけなので、衛生面の心配はありません。ボランティア初心者・炊き出し未経験者でもスタッフに入り、ベテランの方と一緒に作業ができます。
フードウォーマーを使えばいつでも温かい料理を提供できます。調理は温めるだけなので、ゴミが少ないのも特徴です。今後も、この試みを続けるそうです。
被災地支援は、これからも続きます。みえ防災市民会議では、「興味があれば、三重県だけでなく他県の人も活動に参加してほしい」としています。
能登半島の被災地だけでなく、その経験は、いつか来る南海トラフ巨大地震の時に役立つはずです。
※現地の写真は「みえ防災市民会議」提供
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。