五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。
2024/09/08
8月末〜9月の始めにかけて日本を台風10号が襲いました。異例のノロノロ台風でした(ノロノロだった原因は次回)。8月から9月は、統計的にみて台風が日本に接近・上陸する数が多いシーズンです。近年は10月にも台風が上陸することがあります。そこで台風についての基礎知識を説明します。
今回、なぜ東海地方では、台風が来る前に豪雨に見舞われたのでしょうか。それは、台風の仕組みを見るとわかります。
台風の中心には「台風の目」があります。「台風の目」では風も弱く、雲も少なく晴れている場合もあります。
その周りには、積乱雲による壁雲(アイウォール=eye wall)があり、雨はこの部分で最も強く降ります。
この壁雲(アイウォール)に向かい、らせん状の積乱雲が連なっていて、この雲の群れを「スパイラルバンド」と呼びます。スパイラルバンドの下では激しい雨が降り続くことがあります。
さらにその外側には「アウターバンド」と呼ばれる積乱雲の列があります。この下でも断続的に激しいにわか雨や雷雨になり、時には竜巻も起きるのです。
今回、台風10号の中心から遠く離れた場所・東海地方で降った豪雨は、このスパイラルバンドとアウターバンドによるものと見られます。台風が接近する前でも豪雨に襲われる可能性があります。これが1つ目のポイントです。
北西太平洋で発生する「熱帯低気圧」のうち、最大風速が秒速約17m以上になったものを「台風」と呼びます。他の海域では同様の気象現象を「サイクロン」「ハリケーン」と呼びます(風速の定義はそれぞれ違います)。
気象庁は台風のおおよその勢力を示す目安として、「半径」と「風速」をもとに「大きさ」と「強さ」 をランク分けしています。
「大きさ」は「強風域(風速15 m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径」で分けます。
「強さ」は、風速でランク分けします。この2つの組み合わせ「大きさ」+「強さ(風速)」でランク分けします。例えば「大型」で「強い」などとなります。
しかし、重要なのは、いずれにしても台風が接近すれば大変な状況になるということです。ランク分けはあくまでも目安で、被害の大きさを示すものではありません。
かつては「並の大きさ」「弱い」などの表現もありました。しかし、これも「安心感を与えてしまう」「予断を与える」などの理由で、使われなくなりました。
台風が接近すれば、その地域に大きなダメージを与えます。命を守るには、とにかく油断しないことが大切です。ここが2つめのポイントです。
台風のエネルギー源は「水蒸気が持つ熱」です。熱帯など海水温が26度以上の暖かい海では、海水が蒸発して「水蒸気」になっています。
「水蒸気」は軽いので上昇して雲になり、その雲が集まって渦巻きになり条件が整うと「熱帯低気圧」になります。
水蒸気は「熱」=「エネルギー」を持っています。台風はエネルギーを持った「湿った空気」の渦巻きですからエネルギー量は膨大です。これが台風の原動力となり、風を吹かせ雨を降らせます。
最近、日本の近くまで来ても台風が成長するのは、日本の周囲の海水が暖かくなってきたからです。このため、日本を襲う台風は、以前よりパワーがあるものに成長するケースが増えてきています。これが3つめのポイントです。
「ここは、かつて台風に襲われたけど大丈夫だった」というのは通じなくなってきています。
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。