命を最優先に 津波が来ないと家に戻るのはNG!第1波は最大波ではないことが多い

2025/02/16

東日本大震災のメ~テレ取材班の被災者インタビューに、「地震のあとすぐ高台に逃げたけど、津波がなかなか来ないので、家に貴重品を取りに帰った」というものが複数ありました。驚きました。気象庁が発表する「到達予想時刻」は、最初の津波が到達する時刻を予測したものです。多くの場合、最大の津波はその後に来ています。

逃げたあと、家に戻った

一晩、家族と屋根で過ごし、翌朝救助された人も

「家に帰って貴重品を持って、高台に戻った」「帰って家の1階で貴重品を集めていたら、家が“ふわっと”浮いた感じがしたので、慌てて2階に上がり窓からひさしを伝って屋根に逃げ、そのまま家ごと津波で流された」などです。この方は、一晩、家族と屋根で過ごし、翌朝救助されました。

命を最優先に

命を最優先に

「一度、高台に避難したら家に戻ってはいけない!」これは誰もがわかっていることですが、つい戻ってしまったのです。大災害の時、通帳、キャッシュカード、印鑑、健康保険証、土地権利書などを紛失しても大丈夫です。

行政機関、金融機関などが対応し、再発行などの手続きをします。まずは「命」です。危険を冒して家に取りに戻る必要はありません。

東日本大震災での津波情報

津波観測状況

2011年3月11日の津波に関する情報を、気象庁の調査資料に基づいて整理します。地震発生は、午後2時46分18秒でした。

□津波警報等の発表状況
   【午後2時49分】【午後3時14分】【午後3時30分】
岩手県・・・3m      6m       10m以上
宮城県・・・6m     10m以上     10m以上
福島県・・・3m      6m       10m以上

合わせて到達予想時刻が発表され、岩手県は「到達と推測」、宮城県は「午後3時」、福島県は「午後3時10分」でした。

<第1波は最大波ではないことが多い>
気象庁が発表する「到達予想時刻」は、最初の津波が到達する時刻を予測したものです。多くの場合、最大の津波はその後に来ています。

気象庁などの観測では岩手県、宮城県、福島県の沿岸には午後3時18分~大津波が到達しています。地震から約30分後で、津波到達予想時刻から10~30分後です。地震後にすぐ避難した人にしてみれば、避難場所から“家に帰る時間がある“ように感じられたのです。

しかし、高台に戻れた人もいれば、戻れなかった人もいました。

南海トラフ巨大地震での想定

迷わず津波避難場所などに避難を

南海トラフ巨大地震の国の想定では、高さ1mの津波の到達は、三重県では太平洋に面している紀宝町・御浜町・熊野市・尾鷲市・志摩市で4分~9分後、紀北町~鳥羽市は9~11分後、伊勢湾内では55~89分後となっています。

愛知県では太平洋に面した豊橋市は12分後、田原市は15分後で、そのほかの伊勢湾、三河湾に面した街はもう少し時間があります。

津波到達までの時間が比較的長いと、避難した方が“家に帰る余裕がある”と思う可能性が高いということです。

津波警報を避難開始のきっかけに

津波予報データベースの構築

気象庁は、予め津波を発生させる可能性のある断層を設定して、そこで地震が起きた場合、どんな津波が起きるのかをスーパーコンピューターでシミュレーションし、その結果を津波予報データベースとして蓄積しています。その数は約10万通りにもなります。

実際に地震が発生した時は、この約10万通りのデータから、発生した地震の位置や規模などに対応する(最も近い)予測結果を選び出し、「津波警報」として発表しています。地震発生から3分以内に発表されます。

ですので、「津波警報通りの津波が来る」とは限りません。実際にどんな津波がいつ来るのかは、その時にならないと分かりません。これは南海トラフ巨大地震の津波予想も同じで、先ほどのデータはあくまでも「シミュレーションの結果」です。

私たちができることは、「グラグラッと大きく揺れたり、津波警報を聞いたりしたら逃げること」です。そして、避難したら家に戻ってはいけません。


五十嵐 信裕

東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。

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