川を遡上、上流で堤防を越えてきた津波 「津波の挟みうち」にあう可能性も

2025/02/23

2011年3月11日の東日本大震災では、たくさんの津波映像がメディアで紹介されました。津波!と言うと「海から陸に流れ込んで来る津波」をイメージしがちです。しかし「内陸側から住人を襲った津波」もありました。海を背に逃げている人たちに、前からも津波が来たのです。津波の挟みうちです。これは河口から川を遡上し、上流で堤防を越えてきた津波です。この現象は南海トラフ巨大地震の時、東海地方でも起きる現象です。

海から津波

海から津波

津波は海からやってきます。そこでテレビ・ラジオなどは、海岸の近くに住んでいる人、働いている人、観光で訪れている人に、「海から離れて高台・津波避難ビルなど高い場所へ避難する」よう伝えます。

海を背に内陸に逃げていたら前から津波が

「津波の挟みうち」にあう可能性も

みんな、海から離れる方向・内陸に向けて避難を始めます。「津波避難ビル」や「高い場所にある津波避難場所」を目指します。

すぐに適切な避難場所を見つけられればいいのですが、そうでない場合、ひたすら海を背に走るはずです。仮にそこが河口近くだったり川沿いだったりした場合、走っていく方向・つまり前からも津波がやってくるケースがあります。「後ろから津波」「前からも津波!」という「津波の挟みうち」にあう可能性があるのです。

津波が川を遡上

川を遡上した津波

東日本大震災で沿岸部に大きな被害をもたらした津波は、河口から離れた内陸部でも被害を出していました。これが「川を遡上した津波」です。川を遡上する(さかのぼる)津波のスピードは、得てして陸上を進む津波より速くなります。

ビル・住宅・自動車など、津波の行く手を阻むもの=抵抗物が無いからです。このため津波は速いスピードで遡上し、走って逃げている人を追い越すわけです。

堤防の強度

堤防の強度

川の堤防は、豪雨での水害=上から川下へ流れていく水が、街に流れ込まないように作られています。堤防の強さも河川水害を前提に強度計算をして決められています。ですので、河口から遡ってくる津波=膨大な量の水の圧力に耐えられないこともあります。

つまり…
1:川の堤防は、川を遡上する水の力には耐えられるように作られていた
2:海から大量の水が次々に流れ込んできて堤防に大きな圧力をかけた
3:地震の揺れによる液状化で堤防の基礎部分が弱くなっていた可能性があった
などのため、津波が川から街に流れ込んだのです。

<同じことは東海地方でも>
南海トラフ巨大地震の時、同じ現象が東海地方の河口部や川沿いで起きる可能性があります。

上記1~3に加えて、4として、地震の揺れで堤防の基礎部分が弱くなり、地震直後に堤防が落ちる可能性が指摘されています。最悪のケースでは、津波が来る前に堤防が壊れて街に川の水が流入、そこに津波に追い打ちをかける可能性が指摘されています。

<河口部、川沿いの住人の避難>
「より高い場所に早く避難する」これに尽きます。それぞれの地域には、地形的な特徴や、街の特徴があります。「避難方法」「避難場所」は場所ごとに違います。自分が住んでいる街はもちろん、訪問先の街に着いたら、そこで災害に遭遇した場合「どう行動すべきか」「どこに避難すべきか」を知っておく必要があります。その情報は、役所、観光案内所、道の駅などで入手できます。予習が重要です。


五十嵐 信裕

東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。

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