2018年1月7日放送
放送倫理検証委員会は2017年12月14日、東京メトロポリタンテレビジョン、TOKYO MXの『ニュース女子』が2017年1月2日に放送した沖縄基地問題の特集を審議した結果、委員会決定第27号として意見書をまとめ公表しました。この番組はTOKYO MXが制作に関与していない“持ち込み番組”のため、放送責任のあるTOKYO MXが番組を適正に考査したかどうかを中心に審議したものです。
放送倫理検証委員会にとって、”持ち込み番組”に対する放送局の考査が適正であったかどうかを検証する初めての事案となりました。考査の適正さを判断するためには、考査という重要な仕事を担当する放送人であれば、視聴して疑問を抱いたら意見をつけるなり、制作会社に問いただすなりすべき点やそうすることが可能であったのかどうかを検討しなければならないとして、この観点から検証した結果、委員会は少なくとも次の6つの点において、TOKYO MXの考査には問題があったと判断しました。
(1)『抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった。』
この番組を視聴する限り、番組制作者が“抗議活動に日当を出している疑いのある組織”として指摘する人権団体およびその共同代表に対して取材を行った形跡はまったく見受けられない。考査担当者は、抗議活動を行う側に取材をしたかどうかについて疑問を持ち、少なくとも制作会社に確認したうえで、放送すべきか否かの判断を行うべきだった。抗議活動を行う側に対する取材映像や取材結果が存在しないことを見過ごした点において、TOKYO MXの考査は適正でなかった。
(2)『基地建設反対派が「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを確認しなかった。』
抗議活動に参加する人々は反社会的な人々であるとする重要な根拠としているのは、地元住民によるインタビューである。しかしこの番組では、制作会社が消防や警察に対し、抗議活動に参加していた人々による救急車の通行妨害の事実の有無を確認した形跡はうかがえない。
(3)『基地建設反対運動に参加する人々が「日当」をもらっている疑いに対して、「日当」という表現の裏付けの確認をしなかった。』
基地建設反対運動に参加する人々が抗議活動に対する手当としての「日当」をもらっているのではないかと表現する根拠として、人権団体のチラシと2枚の茶封筒のカラーコピーが用いられている。しかしながら、人権団体のチラシには「日当」との記載はなく、「特派員を派遣しよう!」「往復の飛行機代相当、5万円」と明記されていることは、映像からも確認できる。考査担当者は、この番組における「日当」という表現について、その裏付けの有無を一層慎重に確認すべきであった。
(4)『「基地の外の」との強調したスーパーを放置した。』
取材VTRのスーパーで、「基地の外の」との形容が4か所で使用されている。いずれも「基地の外」の文字だけが黄色の斜体で強調されている。それだけで特別の意図があるのではないかという疑問を持つべきである。少なくとも確認のうえ、納得のできる理由が示されなければ修正を要請すべきであった。
(5)『侮蔑的表現のチェックを怠った。』
取材VTRでは、抗議活動に参加する人々のことを「反対派の連中」と呼んでいる。さらに、「基地の外の反対運動の人達は土日休み」、「週休2日」、「過激派デモの武闘派集団『シルバー部隊』」といった表現が用いられている。これらの表現が抗議活動に参加する人々のことを抑楡する意味合いで用いられていることは明らかである。TOKYO MXの考査では、このような侮蔑的表現を指摘し、修正を求めるべきであった。
(6) 『完パケでの考査を行わなかった。』
“持ち込み番組”では、放送局は番組の制作過程にほとんどかかわらない。それゆえに、慎重かつ厳格な考査が求められる。とりわけ、この番組に関してTOKYO MXがすべての編集が終わった完パケでの考査を行わなかったことは大きな問題である。この番組では、スタジオ収録部分のスーパーは考査後につけられ、考査担当者はまったくチェックしていない。放送する内容を視聴者に届く状態でチェックすることは、放送について責任を持つ者の最低限の義務であるが、この番組では、それを怠った結果、スタジオ収録部分に、根拠のないスーパーが付けられて放送された。
委員会は、これら6つの点を挙げ、TOKYO MXの考査が適正に行われたとは言えないと指摘しました。そして、複数の放送倫理上の問題が含まれた番組を、適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと判断したものです。
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