「娘の死を無駄にしたくない」事件後、戦い続ける遺族  被害者支援の必要性を訴え

2023年8月25日 18:22
三重県朝日町で、中学3年の女子生徒が少年に襲われ、死亡した事件から8月25日で10年。被害者支援の必要性を訴え、戦い続けている遺族の今の願いとは…

寺輪博美さん

毎朝欠かさず、愛する娘にメッセージ
「ミーイー(博美さん)、おはよう今日も一日始まったよ。今日も猛暑だからね、ゆっくりしなよ」
 三重県四日市市に住む寺輪 悟さん(55)。

 寺輪さんは毎朝欠かさず、愛する娘にメッセージを送っています。

「毎日変わらず送っている。一日の出来事とか、唯一SNSでつながっている気がして、『そうだね』っていうぐらいの返事が返ってこればいいところかなってくらいに思ってます」(寺輪悟さん)
 

寺輪博美さん

 しかし、悟さんのメッセージに既読がつくことはありません。
 
 当時中学3年だった娘の博美さんは、2013年8月、朝日町で、花火大会から歩いて帰る途中、当時高校3年だった少年に襲われ死亡しました。

 その後、少年は、強制わいせつ致死などの罪で起訴され、懲役5年以上9年以下の不定期刑が確定しました。
 

博美さんのウェディングドレス姿

「子どもは本当に太陽みたいなもん」
「もう本当に人生どん底でした。今まで味わったことのないような。やはり時間という概念もなくなりますから、昼夜問わず食べることもできず寝ることもできず」(寺輪さん)

 幼児のころから新体操に打ち込んでいた博美さん。思いやりにあふれ、一家にとってかけがえのない存在でした。

「子どもは本当に太陽みたいなもんですよ。仕事でも毎日続けられますしやはり寝顔を見れば明日も頑張ろうって気持ちになりますよね。ウエディングドレス姿は見ることができた。一番好きな写真です」(寺輪さん)

 

遺体の検査費用の請求書

博美さんをさす「屍」の文字に衝撃を受ける
 そして、追い打ちをかけるような出来事も。

 事件直後に届いた、遺体の検査にかかった費用の請求書。

 博美さんをさす「屍」の文字に衝撃を受けたと話します。

「当時はもう本当に心をえぐられました。」(寺輪さん)

「すごく簡素というか」(記者)

「事務的なもんだね。私はもう本当に言葉にならない絶句としか言いようがなく、泣きながら振り込みました」(寺輪さん)

 

犯罪被害者を支援する条例の必要性を直訴

娘の死を無駄にしたくない
 悲しみは癒えませんでしたが、一方で新たな気づきも。それが、裁判での「被害者参加制度」でした。

 裁判所の許可を得て、被害者が被告人に質問したり、法廷で刑の重さついて意見を述べたりすることができる制度です。

「昔の悔しい思いをした被害者遺族の方が。少しずつ声を上げてくれた結果、私が今、法廷の中に入っているという事実を知った時に、私も被害者遺族として何か1つできないかなと思ったのが一番の始まりです」(寺輪さん)

 娘の死を無駄にしたくない。事件から5年が経つ頃、寺輪さんは動き始めます。

 民間の支援団体とともに、当時の三重県知事に面会。犯罪被害者を支援する条例の必要性を直接訴えました。

 

現在では検査費用の遺族負担がなくなり、請求書が遺族に届くこともなくなる

今も深い悲しみや憤りを感じながら日々を過ごす
 その訴えが実を結び、三重県は、2018年に条例の制定を表明。翌年、都道府県で初めてとなる見舞金制度の創設につながる条例が制定されました。

 その後も、条例の制定を求め県内の自治体を訪問し、2022年10月には、すべての自治体で被害者支援の条例や要綱の制定されました。

「声を上げないと何も変わらないことに気づいた。遺族がどれだけつらい思いをして生活しているのか。それの現状を知ってもらいたい。そしてもう少し、世の中が犯罪被害者や遺族に対して、もう少し考えを変えてもらえれば」(寺輪さん)

 また、「屍」と書かれた遺体の検査費用の請求書。

 現在では検査費用の遺族負担がなくなり、請求書が遺族に届くこともなくなりました。

 生きていれば25歳になっていた博美さん。

 被害者支援制度は徐々に見直されているものの、悟さんは、今も深い悲しみや憤りを感じながら日々を過ごしています。

「犯罪に巻き込まれて先に亡くなる。この世からいなくなるってことは、何年たっても多分区切りはつけられない。娘を返してくれ。あの時の楽しい5人家族に戻してくれ。それしか言いようがない」(寺輪さん)

(8月25日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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