テコンドー最強女王・山田美諭、試練乗り越えパリ五輪へ 家族の絆に迫る

2024年1月18日 17:23

「足のボクシング」とも呼ばれるテコンドー。2大会連続のオリンピック出場へ。大ケガからの復活に取り組み、夢に向かって突き進んだベテランの愛知県瀬戸市出身・山田美諭選手に迫りました。

山田美諭選手

 「最年長として今までの経験と自分の意地を見せて、勝ち取りたいという思いが今回はすごく強かった」(山田美諭選手)

 試合後に見せた大粒の涙。パリへと繋がる一発勝負の選考会に、強い決意で臨んだアスリートがいました。
 
 瀬戸市出身、テコンドーの山田美諭選手。

 

女子軽量級の絶対王者として君臨してきた山田美諭選手

女子軽量級の絶対王者として君臨

 「城北信用金庫の山田です」(山田美諭選手)

 東京の信用金庫に勤めながら競技を続ける30歳。自らのご褒美にいつも買うのは、大好物のどら焼き。

 普段、笑顔を絶やさない彼女もいざ練習に入ると、すっかり格闘家の表情に。
 
 これまで全日本選手権を制す事、10回。女子軽量級の絶対王者として、君臨してきました。

 

東京五輪後にSNSで届いたメッセージがすごく嬉しかった

メダル獲得まであと一歩

 3年前の東京オリンピック。世界ランキング2位の選手を破り、この階級で日本人初となる5位入賞。メダル獲得まであと一歩に迫りました。

 「試合をしているとき、地上波で放送していることを知らなくて、終わった後にSNSでたくさんのメッセージが届いていて、初めてテコンドーを見た方が『感動した』『勇気をもらった』と送ってくれて、すごくうれしかったです」(山田美諭選手)

 東京オリンピック以降、一度は競技から離れたものの、おととし、再びオリンピックの舞台を目指し、練習を再開しました。

 

山田選手の心の支えは“家族”(提供:城北信用金庫)

心の支えは“家族”

 ところが――

 去年3月、蹴り足となる「左ひざ」の、前十字靭帯を断裂。

 「海外合宿で海外の選手と組手をした際、靭帯を損傷してしまって、緊急で帰国して手術をしました」(山田美諭選手) 

 手術後に待ち受けていたのは、約9カ月間に及ぶ、リハビリでした。

 「やっぱり私の中で1番大きかったのが、パリで金メダルを獲得するという目標がブレていなかったからこそ、ずっとリハビリに集中してやってこられた」(山田美諭選手)

 そんな山田選手の「心の拠り所」となったのが、家族の存在でした。

 「仲が良いので普段から連絡は取り合っているけど、私がたぶん前向きになれるよう、温かく見守ってくれている」(山田美諭選手)

 

山田選手の父・啓悟さん

「頑張っているだけでも父親としてはうれしい」

 瀬戸市にある実家の道場「男塾」。空手とテコンドーの師範を務めるのが、父・啓悟さん。

 3歳から山田選手に空手を教え、中学1年からは、得意の足技を活かせるテコンドーに転向を勧めました。

 「昔から空手の試合でもそうだけど、芯の強さみたいなものが垣間見える部分があって、どん底に落ちてもパリ五輪でメダルを取ったらカッコいい。その目標に一生懸命、頑張っているだけでも、父親としてはうれしい」(父・啓悟さん)

 「この試練を乗り越えたら、さらに強くなれると思うし、『強くなった』『一皮むけた』と思ってもらえる試合をしたい」(山田美諭選手)

 

パリオリンピックに繋がる日本代表選考会

一発勝負に臨む

 1月開かれた、パリオリンピックに繋がる日本代表選考会。

 山田選手が実戦練習を再開したのは、わずか1カ月前。ヒザには、テーピングが何重にも巻かれていました。

 優勝以外は、パリへの道が途絶える、一発勝負に臨みました。役員を務める父・啓悟さんも見守る中――

 痛めた左足を巧みに操り、得点を奪っていきます。時には、左足でカラダを支えきれず、倒れ込む場面も。

 まさに満身創痍の身体で、なんとか勝利を重ねていきます。

 

代表決定戦に臨む山田美諭選手

挑戦者の立場で挑む日本代表選考会

 そしてたどり着いた、代表決定戦。相手は、去年の世界選手権で銅メダルを獲得した、17歳の新星、岡本留佳選手です。

 「今回は、挑戦する側の気持ち」(山田美諭選手)

 第1ラウンドを落とし、あとが無くなった第2ラウンド。

 スピードを活かして攻撃を仕掛ける相手に対し、カウンターが決まり2点を先制します。

 しかし、その後、同点に追いつかれると、終盤で3点を奪われます。

 山田選手は猛攻を見せましたが、ブザーが鳴り、パリへの挑戦は、ここで終わりました。

 

山田美諭選手

「また強くなって戻ってきたい」

 「『お疲れ様、ありがとう』と言われました。悔しさと申し訳なさがこみ上げてきて、父も泣いていたので、悔しかったんだと思います」(山田美諭選手)

 「最後の最後まで応援できた。テコンドー1本にかけて、ここまでがんばってきたので、親としては『お疲れ様でした』と言いたいと思います」(父・啓悟さん)

 「結果としてパリ五輪に出場が出来なくなったけど、また強くなって戻ってきたいと思います」(山田美諭選手)

(1月18日15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』じもスポ!コーナーより)

 

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