自分宛ての郵便物が届いたのに「カタカナだから渡せません」 総務省が日本郵便に見直しを要請
2024年5月14日 19:50
「届いた郵便物は自分宛てなのに受け取ることができなかった」。こうした相談が総務省に寄せられ、総務省中部管区行政評価局が14日、日本郵便東海支社に改善に向けた要請を行いました。
総務省中部管区行政評価局の入る合同庁舎
去年9月、愛知県常滑市の男性の元に郵便物が届きました。宛名の氏名は確かに自分のものでしたが「本人確認が取れない」として受け取ることができませんでした。
いったい、どうしてでしょうか?
まず、この郵便物が「特定事項伝達型の本人限定受取郵便」であったことです。
「特定事項伝達型の本人限定受取郵便」とは、金融機関やクレジットカード会社がキャッシュカードやクレジットカードを送付する際に、差出人に代わって日本郵便が本人確認をして手渡すもので、犯罪防止のため厳格な本人確認が義務付けられています。
マイナンバーカードの変更後のイメージ(総務省提供)
カタカナ表記では受け取れない
そして今回、男性が郵便物を受け取れなかった最大の要因は、この郵便物の宛名が「カタカナ」表記だったことです。
郵便局の職員は本人確認のため、男性に対して「氏名がカタカナで表記された写真付きの本人確認書類」の提示を求めましたが、提示することができなかったため本人確認に至らないとして郵便物は差出人に返送されてしまいました。
なぜ宛名がカタカナ表記になっていたかは不明ですが、男性は2日後、本人確認の方法を緩めるよう総務省中部管区行政評価局に行政相談をし、同局が調査に乗り出しました。
総務省が調べたところ、日本郵便が特定事項伝達型への本人確認書類と定めているのはマイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど写真付きの13種類です。しかし日本人について、いずれも氏名をカタカナで表記しているものはありません。
唯一、沖縄県内の市町村が発行する「離島住民割引運賃カード」は氏名の漢字に読み仮名(ルビ)が振ってありますが、日本郵便は「ルビはあくまで読み方である」という見解のため、結局、本人確認書類が漢字表記であった場合は宛名が「カタカナ」の郵便物は受け取ることはできません。
総務省によると2026年度以降、マイナンバーカードに読み仮名のほか、希望者にはローマ字と西暦の生年月日も追記欄に記載できるようになる見通しですが、現状の日本郵便のルールのままでは、宛名がカタカナの郵便物は受け取ることはできないといいます。
「渡邊」→「渡辺」もダメ
実は「特定事項伝達型」の郵便が返送されるケースは少なくありませんでした。
総務省が複数のクレジットカード会社などを対象に調査したところ、最も多い会社で年間約6600件が返送されていました。これは、この会社の発送数全体の6%を占めています。このうち「氏名の不一致」が理由のものは約600件あったということです。
調査の際、クレジットカード会社からは「カタカナだけでなく『渡邉』『齋藤』の宛名が『渡辺』『斉藤』と記載していて返送されたこともある。外国人の顧客も増えてきているので、本人確認について柔軟に対応してほしい」という意見も寄せられています。
総務省中部管区行政評価局はこれらの調査結果や有識者による会議を経て「あっせん」という形で次のように改善要請を行いました。
1 宛名が全てカタカナで表記されている場合、日本郵便が定めた13種類の写真付き本人確認書類では氏名の確認ができず、配達や交付できない取扱いとなっていることを踏まえ、ホームページ、日本郵便の窓口、特定事項伝達型の受取人に対する通知等において、受取人に交付できない事例を具体的に明示すること
2 外国人の受取人が増加していることや今後、戸籍やマイナンバーカードに読み仮名が記載されること等を踏まえ、特定事項伝達型の配達や交付に係る本人確認方法について、その安全性や確実性に配慮しつつ、工夫できる余地はないか検討し、一定の見直しを行うこと
日本郵便からは今年8月までに何らかの回答がある見込みだということです。