あわや腕を切断…「人食いバクテリア」の元患者が語る 劇症型溶連菌感染症が増加
2024年5月24日 14:05
致死率が3割に及ぶという劇症型溶連菌感染症の患者が、東海地方でも例年を上回るペースで増えています。感染拡大の背景と、その対策は。
去年の秋ごろから“溶連菌”が増えているなか、警戒をしなければいけないのが“人食いバクテリア”です。
溶連菌感染症とは、子どもに多くみられる感染症です。
そのうちのひとつ「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」は愛知県内で去年の秋ごろから感染者が急増しているといいます。
名古屋の今泉クリニックでは、発熱や、のどの痛みなどがある子どもには積極的に溶連菌の検査をするといいます。
溶連菌とはどういった感染症?
「溶連菌に関しては、溶血性レンサ球菌という細菌ですね。主にあるのは発熱を伴います、のどにばい菌がつきますから、のどの痛みを訴える方がいらっしゃいます」(今泉勲 院長)
溶連菌感染症は、軽症の場合は抗生剤を10日間ほど飲むなどすれば、治るということですが、大人ではごくまれに、命の危険に陥ることもあるといいます。
「重症化する方は30歳以上の大人の方が多いと思います。特に劇症型と言って非常に症状が強く出るもの。よく“人食いバクテリア”と言われるようなものですけど。体中の臓器が悪くなって、多臓器不全になる人もいます」(今泉院長)
劇症型溶連菌は、愛知県内でも増えています。今年は5月15日現在で57件。
すでに去年1年間と同じ人数となっています。
劇症型溶連菌 患部の写真
致死率は3割“人食いバクテリア”
「劇症型」、いわゆる“人食いバクテリア”に侵された、患部の写真です。
「先生には半日遅ければ手の施しようがなかったと言われた」(元患者 上林さん)
名古屋市の上林さんは8年前に「劇症型」と診断されました。最初に感じた症状は右手の指の痛み。「痛風」かと思い、そのまま出勤しました。
「全体が腫れだして、鉛筆が持ちにくくなった」(上林さん)
帰宅後、症状はどんどん悪化…。
「(気づいてから)12時間ぐらいで、あそこまで。じっとしていられない痛みになってきた」(上林さん)
症状が悪化すれば、手足が壊死するだけでなく多臓器不全を引き起こし、死に至る恐れも。致死率は3割といわれています。
手術を受ける際、医師からこう告げられたといいます。
「腕を切断する可能性もあると。この痛みから解放されるなら最悪それも仕方ないと。腫れがこの辺(ひじのあたり)まできていた」(上林さん)
なぜ今年、患者が増えているのか。今泉院長は「新型コロナ」の5類移行が、背景にあるといいます。
「これまで新型コロナの感染のまん延があり、感染予防をしていた。それによって抑えられていた。ただし、去年5月の5類移行によって、感染予防が少なくなっている状況」(今泉院長)
今泉院長によると「溶連菌」は人から人へうつるということです。
特に多いのはせきやくしゃみによる、飛沫や接触による感染。手足などの傷口から、菌が入ることもあるといいます。
「もし周りに溶連菌が出た場合は、当然マスクをしっかりすること、手洗いをしっかりすることが重要だと思う。傷口がある場合は、しっかりと覆うなどガードをすることが必要」(今泉院長)