照ノ富士にウズラの卵1万個なぜ? 生産全国1位の愛知県が初企画 きっかけは夏休みの「大ピンチ」

2024年7月30日 06:01

大相撲の名古屋場所で優勝した横綱照ノ富士に、愛知県が「横綱級」の副賞を贈りました。その中身は…ウズラの卵1万個!背景にあるのは、「大ピンチ」で迎える夏休みでした。

「天狗缶詰」のウズラの卵の製品

大手メーカーの在庫量6月は前年比7割増し 給食向け出荷大幅減で

 名古屋市に本社のある食品メーカー「天狗缶詰」。給食向けの「ウズラの卵」製品の大手ですが、その出荷数が大幅に減少しています。

 在庫量は、去年の同じ時期と比べて4月は約1.50倍に。5月は1.71倍、6月は1.76倍と在庫が積みあがっています。

 きっかけは2月に福岡県で起きた小学生の誤嚥事故です。給食に使うのを見合わせる動きが出て、消費が落ち込んでいます。

 担当者は「はっきりと需要が戻るという想定が持てず、このままでは『なんとなく減る。なんとなくメニューから外れていく』といった懸念が大変大きい。打破するためにはさまざまな取り組みが必要かと感じている」と危機感を募らせます。

 

ウズラの卵の水煮を予約販売した豊橋市役所で配布する様子(6月24日)

生産者の「大ピンチ」救え 給食なくなる夏休み前に産地の豊橋市は

 大ピンチを迎えていたのが生産者です。夏休みには給食がなくなり、さらに苦境に立たされることが見込まれていました。

 ウズラの卵の生産で全国シェア1位を誇る東三河地域の豊橋市役所では、6月24日、生産者を支援しようと、賞味期限が迫った「卵の水煮」の在庫を職員に向けて予約販売しました。

 豊橋市によりますと、この取り組みがテレビや新聞で取り上げられて以降、愛知県内の4つの市から連絡があり、同じような支援の申し出があったということです。

 市の担当者は「消費の落ち込みを広く知ってもらったことで、家庭や企業でウズラの卵を使う機運が高まるとありがたい。和洋中、どんなジャンルの料理にも合い、栄養価も高い。よくかんでゆっくりおいしさを味わってほしい」と話します。

 販売支援を申し出た自治体の1つ、愛知県あま市では、7月5日に職員に購入を呼びかけたところ、段ボール200箱分(ウズラの卵5万7600個相当)の予約がありました。担当者は「少しでも生産者の力になれれば」と話します。7月30日に予約販売分を職員に配布予定だということです。

 

朝食ビュッフェでウズラの卵を使った料理の食べ放題サービス(提供:ホテルアソシア豊橋)

おでんもカレーうどんにも ホテルは「ウズラの卵食べ放題サービス」で支援

 新たな支援はホテル業界からも。

 JR豊橋駅直結の「ホテルアソシア豊橋」では6月下旬から、朝食ビュッフェで地元のウズラの卵を使い始めたということです。

 地元の特産品ちくわを使ったおでんや、カレーうどん用だといい、ビュッフェなので好きなだけ食べられるサービスです。

 お客さんからは「地元のものがたくさん食べられてうれしい」と好評だと話します。

 さらには、こんな取り組みも。

 大相撲名古屋場所で優勝した横綱照ノ富士に、愛知県が副賞として贈ったのがウズラの卵の水煮1万個です。

 6月の愛知県議会本会議で大村秀章知事が「日本のウズラ卵需要に応える基幹的な役割を担う大変重要な産業」「愛知県産のウズラ卵を全国にPRする」として贈呈を表明していました。

 県の担当者によりますと、照ノ富士には目録をすでに渡していて、後日、照ノ富士が所属する伊勢ケ浜部屋にウズラの卵の水煮1万個を発送するということです。

 ウズラの専門農協「豊橋養鶉農業協同組合」によりますと、在庫が増えすぎて新たに倉庫を借りている組合員もいるといいます。
 
 「復活」のカギを握るのは、やはり安定した出荷が見込める給食。農協の職員は「2学期からの給食で出荷が増えていくことを期待したい」と話します。

 一方、愛知県に本社のある企業が、社員食堂でウズラの卵を扱うことを最近になって決めるなど、新たな動きも出ています。

 「先週から出荷が始まった。こういうところにも広げていけたら」と農協では給食だけに頼らない販路開拓も模索しています。

 

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