東北の豪雨災害 なぜコロコロ変わった「特別警報」「警報」私たちはどうすればいいのか【暮らしの防災】

2024年8月2日 11:16

7月末の秋田県と山形県の記録的な大雨で、気象庁は7月25日の午後1時5分、山形県に「大雨特別警報」を発表しました。その後「大雨特別警報」が出たり「警報」になったり、また「大雨特別警報」になったり…私たちはどうすればいいのでしょうか?

コロコロ変わった「特別警報」「警報」

東北での豪雨災害

 7月末の秋田県と山形県の記録的な大雨。気象庁は25日の午後1時5分、山形県に「大雨特別警報」を発表しました。そして午後8時10分に「大雨特別警報」から「大雨警報」に切り替え(ランクダウン)しました。(雨の状況が基準値を下回ったことなどから)

 その3時間半後、午後11時40分に再び「大雨特別警報」に切り替え(ランクアップ)ました。

 翌26日午前5時50分「大雨特別警報」が、また「大雨警報」に切り替わり、最終的にこの「大雨警報」が解除されたのは、26日の夜でした。

 

気象庁HPより

特別警報とは

 「特別警報」「警報」は、私たちに「危険な状態が迫っていること」を教えてくれる情報です。それがコロコロ変わると「私たちの安全度もコロコロ変わっている」ように感じられます。

 そもそも「警報」とは、重大な災害が発生するおそれのあるときに警戒を呼びかけて行う予報です。
 
 「特別警報」とは、「警報」をはるかに超える大雨や、大津波等が予想され、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっている場合に発表し、最大級の警戒を呼びかけるものです。気象庁では、2013年8月30日から運用しています。

 となると「警報」から「特別警報」になると、「危険が迫って来ている」となりますが、その逆だと「危険が去った」ようにも聞こえます。

 

気象庁HPより

山形県での推移

 実際のところどうなのか、7月25日の山形県の状況を確認してみましょう。

◆7月25日 08:15  
 大雨警報 洪水警報
◆7月25日 13:05  
 大雨特別警報 (警報から切り替え)
◆7月25日 13:07
 顕著な大雨に関する全般気象情報 (線状降水帯が発生)
 〜最上川中流で水位上昇が観測される〜
 〜雨が弱まる〜
◆7月25日 20:10  
 大雨特別警報解除 (警報に切り替え)
 〜雨が強まり始める〜
◆7月25日 22:47
 顕著な大雨に関する全般気象情報 (線状降水帯が発生)
◆7月25日 23:40  
 大雨特別警報 (警報から切り替え)
 〜最上川中流域 水位上昇続く〜
◆7月26日 05:50 
 大雨特別警報解除 (警報に切り替え)

 こうして見ると、今回の特別警報は線状降水帯と関係が深そうです。線状降水帯は、このコラムでも紹介していますが「発生」「消滅」の予測が、極めて難しい気象現象です。そのような事情も「特別警報」「警報」の発表に影響を与えた可能性があります。

 

最上川(山形県新庄市・本合海観測所) 国交省のデータから作成

危機は雨だけでない

 しかし、雨が止んでも川の増水は続いています。また土にしみ込む水も増え続けています。雨のレベルが下がっても、「洪水」「土砂災害」などの危険は去っていません。

 つまり「大雨特別警報」が「大雨警報」に切り替えられても、「危険度」は変わっていません。そもそも「警報」は、危機が迫っていることを伝える情報なのですから。

 「特別警報」が「警報」になっても、私たちは引き続き身の安全も確保を続ける必要があります。

 今回、気象庁と山形地方気象台は、特別警報を解除して警報に切り替える際、報道機関に、以下の解説資料を出しています。

【山形地方気象台のHPから引用】
 「山形県酒田市及び遊佐町では、このままの状況が続けば、発表している大雨特別警報は警報に切り替えとなる見込みです。大雨特別警報が警報に切り替わった後も油断することなく、地元自治体が発令している避難指示(警戒レベル4)等に従って身の安全を確保してください。これまでの大雨により地盤の緩んでいるところがあります。土砂災害についても引き続き、厳重に警戒してください」

 この対応について、山形地方気象台は「大雨特別警報を大雨警報に切り替えることで、大雨警報が安心情報と捉えられないようにこの資料を出した」としています。「大雨特別警報」が「大雨警報」になっても、引き続きの警戒と新たな防災情報のチェックをしてください。

    ◇

 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕
 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。

 

これまでに入っているニュース