妄想が伝染する 「フォリアドゥ」とは? 精神科医が「社会で孤立しがちな人」へ警鐘鳴らす
2024年10月12日 10:59
恋人や家族など親密な関係の人と一緒にいると、言動や考え方が似ていき、関係の深さを実感する人も少なくないでしょう。しかし時として、その親密な関係の人の影響で、「妄想」が伝染していく精神疾患に陥ることがあります。妄想が伝染する…とはどういうことなのか。さらに、予防や対策について、名古屋市内でクリニックを開業する精神科医に話を聞きました。
「塩釜口こころクリニック」 河合佐和医師
恋人の妄想が伝染?「フォリアドゥ」
「フォリアドゥ」という言葉をご存じでしょうか。
「塩釜口こころクリニック」(名古屋・天白区)の 河合佐和医師によると、「フォリアドゥ」とは、フランス語で「二人狂い」を意味する精神疾患の名称です。
この秋話題の映画のタイトルにもなっている言葉です。
もともと精神疾患のある人が抱く「妄想」が、恋人や家族など「気持ちが強く結びついている人」に伝染していく病気で、社会の中で孤立しがちなカップル・家族や、当事者間のパワーバランスが支配的だった場合にも起こりやすいといいます。
パートナーや家族が妄想をしていて、最初は「ありえないことを言ってるな」と思っていたとしても、一緒に親密に過ごす中で気付かないうちに「やっぱり本当にそうなのかも…」と思うように。
実際に河合医師が診察したケースでは。
「奥さんが霊的な思考がみえると言い出した時に、旦那さんは最初はまさかと思ったんですが、少しずつ旦那さんの方も、やっぱりそうなのかもしれない、見えないものが見えるかもしれないという感じになり、そのことで、日常生活で周りを遮断したり、周りを攻撃しだしたりだとかすることによって、社会生活が成り立たなくなっていきました」(塩釜口こころクリニック・河合医師)
社会で孤立しがちなカップルなどに起こりやすい
“カリスマ”の存在も「フォリアドゥ」と言える?
妄想が伝染する「フォリアドゥ」はどの程度親密な関係において、おこるのでしょうか。
例えば「カリスマ」という存在は、必ずしも関係性が深くなくとも、多くの人の心をつかみ、独自の考えを広げる人と言えますが、これも「フォリアドゥ」なのでしょうか。
河合医師は、この線引きは難しいと話します。
「カリスマ的な人がいて、そこに人が寄ってきたり同調してきたりする場合、(それが家族や恋人という関係性でなくても)、そのカリスマの思考が妄想に近いものであれば、時に感応精神病(フォリアドゥ)に近い状態になる可能性があります」(河合医師)
当事者は気づくことが難しい「フォリアドゥ」
予防・対策は周囲の介入がカギ
気がつかないうちに陥ってしまう「フォリアドゥ」。予防や、妄想を共有するようになってしまった場合の対策は。
河合医師はまず、パートナーや親子関係など特定の人に依存せず、それ以外の人とも関係を築いていくことを推奨します。
さらに、「フォリアドゥ」になると当事者は気づくことが難しく、周囲が介入することが大事だと語ります。
「もともと妄想を持った精神疾患にり患している発端者は、入院治療が必要になってくるケースが多いと言われています。影響をうけた側は、発端者と距離を取ることで治りやすくなります」(塩釜口こころクリニック 河合医師)
(メ~テレ記者 内田悠雅)