「看護師は寿命がある限り働くのよ」上司の“助言”を胸に…フリーランスナースが提案する新たな看護
2024年11月4日 12:31
高齢化時代、介護・福祉施設など様々な現場で看護師の存在が求められています。個人のライフステージにあわせ柔軟に働ける新しい看護モデルを広めたいと奮闘する女性を取材してから1カ月。夢に向かいクラウドファンディングに挑戦した結果は…。
障害者施設での中嶋美世子さん
うつ病を乗り越え起業へ…クラファンに挑戦
フリーランス看護師のサポートなどを行う「ポケットナース」。
愛知県東浦町に住む中嶋美世子さん(46)が、今年1月にひとりで立ち上げた事業です。中嶋さん自身もフリーランス看護師で、小学6年生の男の子の母親でもあります。
20年以上勤務した総合病院を3年前に退職した中嶋さん。きっかけは「うつ病」でした。仕事の重責と子育ての大変さが重なり体調を崩し、しばらくの間ゆっくり休養をとりました。
徐々に、心の健康を取り戻していくうちに、このまま“潜在看護師”になるのはもったいないと“自由な働き方”を選択しました。「ポケットナース」の事業名に込めたのは、「看護師がいつでもポケットの中にいるような身近な存在であり続けたい」という思いです。
中嶋さんは「ポケットナース」の法人化を目指し、1カ月半かけてクラウドファンディングに挑戦してきました。目標金額は60万円。当初、中嶋さんの情熱を理解してくれる人は少なかったものの、受付終了間際の9月30日午後11時半過ぎ、ようやく目標達成にこぎつけました。
「1個人のフリーランス看護師に対しこんなに協力してもらえたことは、病に伏していた頃には想像できなかった。そんな私が48人の方から支援をいただいて、その資金で法人化できることは本当にうれしい限りです。支援金で法人化した看護事業はあまりないと思うので、自信をもって社会貢献していけます」(中嶋さん)
立ち上がった株式会社「ポケットナース」HPの一部
「ポケットナース」が目指す社会貢献とは
11月の株式会社設立に向け、急ピッチで業務を進めてきた中嶋さん。クラウドファンディングを通し事業に賛同してくれる仲間が30人ほど見つかりました。
中嶋さんに新しい看護モデルの具体例や、法人化した「(株)ポケットナース」が、どのように社会貢献していくのかたずねると…。
「ポケットナース」の大事な役割の一つは、フリーランス看護師が困った時の相談相手になることだと言います。
中嶋さんによると、フリーランス看護師になると真っ先に直面するのは、カンファレンス(患者のケアについて問題や課題を共有する場)の機会が失われていくことだと言います。
「患者に対する声かけはこれで大丈夫か?がん患者から旅行がしたいと相談されたら、それを実現させるためにどんな方法があるのか…知識の共有が必要になります。そうした看護師同士の“勉強の場”を持続的に作っていくことが大切です」(中嶋さん)
“糖尿病の歌”を作る程「糖尿病」の知識が豊富な中嶋さん
「看護師は寿命がある限り働くのよ」
行き届いたサポートにも力点を置くと言います。
「個人事業主になったフリーランス看護師の中には、経理が得意ではない…という声も聞かれます。そのことがフリーランスになる障壁とならないように、経理のサポートや代行も担います」(中嶋さん)
「オンライン看護」も、高齢化社会の下、要望が増えると見ています。一人暮らしのお年寄りの体調相談や食事指導、薬の管理や助言も対応可能です。遠方で暮らす両親のために…そんな声にも対応していきたいと言います。
その他、病院へ付き添って医師の診断をかみ砕いて患者に伝える“橋渡し役”も需要がある…など、中嶋さんの頭の中には、新しい看護のカタチが次々と湧きあがってきます。
「必ずしも医療現場にいるだけが看護師の仕事ではない。ライフステージにあった自分の働き方を模索することで、潜在看護師の方も復帰しようと思うチャンスにめぐりあえるかもしれない」
「昔、ある上司から『看護師は寿命がある限り働くのよ』と言われたことがあります。働き方を変えれば、80代になっても現役でいられる職業だと思っています。もちろん私の目標も、80代まで働けるフリーランスナースです」(中嶋さん)
(メ~テレ 加藤歩)