“ワンイシュー”戦略で元市議が初当選 新アリーナ建設を反対【豊橋市長選】
2024年11月11日 19:52
10日に投開票された、愛知県の豊橋市長選挙。地元プロバスケットボールチームの本拠地にも使う予定のアリーナ建設計画が争点となり、反対を訴えた元市議が初当選しました。
新アリーナなどの建設計画が争点に
豊橋市長選で初当選した、元市議で新人の長坂尚登氏。
11日の朝、市役所で当選証書が渡されました。
集まった報道陣に対して、口にしたのは――
「契約書を見ると、契約解除に向け市から相手方に通知をするとなっている。通知を速やかに出して、その後は相手方の反応次第になってくる」(長坂尚登氏)
市長選で大きな争点となったのが、多目的屋内施設、新アリーナなどの建設計画。
市の中心部にある豊橋公園が予定地となっていて、収容人数は5千人以上。
豊橋市によりますと、30年間の維持管理費を含め、約230億円の事業費を見込んでいます。
総合体育館は築30年以上が経過し、老朽化が進んでいる
総合体育館は老朽化が進む
11月6日にあった、地元が拠点のプロバスケットボールチーム「三遠ネオフェニックス」の試合。
現在、B1リーグ中地区で首位を走るチームはこの日も選手が躍動し、満席の会場はヒートアップ。
しかし試合があった総合体育館は、築30年以上が経過し、老朽化が進んでいます。
「雨がひどいと漏れる時があるみたいです。なのできれいになるといい」(豊橋市民)
豊橋市民
新アリーナ計画について市民は…
現在の体育館は収容人数が3000人ですが、2年後からは「5000人規模のアリーナの確保」が最上位リーグに参入する条件の1つとなっています。
ネオフェニックスの新たなホームアリーナになる予定の新アリーナ計画について、ファンからは――
「あそこは低い。川があるから、あまり良くないと思う」(豊橋市民)
豊橋公園の朝倉川沿いエリアは「家屋倒壊等氾濫想定区域」に指定されている
状況を把握しないまま、市は整備計画を発表
当初、新アリーナの建設予定地となっていた豊橋公園の朝倉川沿いのエリアは、愛知県が「家屋倒壊等氾濫想定区域」に指定。
想定しうる最大規模の雨が降って洪水が発生した際、家屋が流失、倒壊する恐れがあるとされていました。
「ゼロベースで6、7カ所検討して、災害時の連携もすべて含めて調査した結果を見て、豊橋公園が最適」(豊橋市 浅井由崇市長 2022年12月)
市はその状況を把握しないまま、整備計画を発表したのです。
新たな問題の発覚を受け、浅井市長は去年、同じ公園内で氾濫想定区域から外れた野球場の跡地に新アリーナを建設すると、方針を修正していました。
新アリーナの建設に反対の声も
「透明性の問題」と指摘する声も
実際に豊橋球場がある場所を訪れてみると、新アリーナ建設計画を進める作業がすでに進んでいることが確認できました。
公園にいた市民は――
Q.どんな政治を期待する
「私もアリーナの建設は反対だった。巨額なお金を使うなら、子どもの給食費の無料化に使うとかね」(豊橋市民)
「若い市長で、新しい発想をしてくれると期待している」(豊橋市民)
「議会がどういう風にして、民意って言いますけど、説明をしていまのプロセスになって(新アリーナを)造ろうとなったのか、そのプロセスがはっきりしていなかったんじゃないのって。透明性の問題じゃないかな」(豊橋市民)
「推進派」多数の市議会の反対で住民投票は実現せず
「推進派」多数の市議会の反対で住民投票は実現せず
論争を呼んだ、アリーナ計画。
反対する市民は署名を集めて住民投票を求めましたが、「推進派」が多数を占める市議会の反対で実現しませんでした。
選挙戦の期間中、改めて浅井氏に新アリーナへの思いを聞くと。
「にぎわいと感動づくりですよ。やっぱり現役世代だと、スポーツやコンサートを楽しめるとか。やっぱりそういった夢と感動の拠点づくりというのをやって、それでにぎわいづくりをやるのが、私は重要だと思っている」(浅井豊橋市長)
長坂尚登氏
“ワンイシュー”の戦略
一方、新アリーナ建設計画への反対を訴えた、長坂尚登氏。
これまで豊橋市議に3回連続当選し、前回の市議選ではトップ当選していました。
「市民の期待の大きさを感じている。僕に市長になってほしい、“新アリーナを止めてほしい”ということですね」(長坂氏)
争点を「新アリーナの是非」に絞った、いわゆる「ワンイシュー」の戦略で、駅前で直接、市民に触れ合い、浸透を図りました。
「市民の声を聞く必要がないという意見を、(浅井市長は)市議会に出してきた。少なくとも豊橋公園には造らないという、市民の期待を大きく裏切ったことが問題」(長坂氏)
豊橋市 浅井由崇市長
浅井氏は、新アリーナ計画が否定されたとは受け止めず
敗戦から、一夜明けた現職の浅井氏。
今回の選挙結果で新アリーナ計画が否定されたとは、受け止めていません。
「多目的屋内施設整備(新アリーナ)が、仮に(争点として)比重を占めていたなら、市民の民意がはっきりと示されて、明らかに推進をすべきだという声が圧倒的に多かったというのが良くわかる」(浅井豊橋市長)
専門家は、今後の市長と議会の対話の重要性を強調
専門家は、今後の市長と議会の対話の重要性を強調
現職が敗れ、新アリーナ反対の新人が当選した今回の市長選。
地方自治の専門家は、今後の市長と議会の対話の重要性を強調します。
「市長と市議会の話し合いで、あるべき方向が見つかれば一番良いが、それが見つからないのであれば、住民アンケートなどで住民の考えを調べ、もう一度市長と市議会が話し合うことが重要。1つの選挙に勝っただけで、これが民意だと決めつけるのではなく、様々な形で民意を探りながら政治・行政を進めていくことが大事」(名城大学 政治学 昇秀樹教授)