高校入試「満点主義」は一番危険 過去問は“大問”ごとに時間を測ろう 愛知の進学塾担当者のアドバイス
2024年11月27日 15:01
高校入試が近づいてきました。愛知県内で進学塾を展開する野田塾(本社・愛知県津島市)の進路指導統括・村上友哉さん(51)に、今シーズンの愛知県の公立・私立高校入試の傾向と、本番に向けてのアドバイスを聞きました。
野田塾の進路指導統括・村上友哉さん
――中学3年生はいまどのような時期でしょう。
愛知県では2学期最後の定期テストが終わり、この結果をもとにした通知表を受験校に送ることになります。
数年前までは、1月の学年末テストの結果をもとにした通知表を公立高校に送っていましたが、入試が1カ月早くなり、中3の1学期と2学期のテスト結果を「総合評価」として高校に送ることになりました。このため、中3は1学期から勝負が始まるということです。
私たちの塾では9月から11月末にかけて、夏期講習のテキストを再活用させています。夏のテキストは中学の2年半分の内容が含まれていて、入試の出題範囲の3分の2を占めるからです。
名古屋高校の入試は東海や滝などと同じ日程になった
公立も私立も、合否を決めるのは「合計点」
――入試は1月の私立高校から始まります。
私立入試は1月22日から24日の3日間にありますが、今シーズンの大きな特徴は、1日目の22日に東海、滝、愛知、愛工大名電、名古屋の5校が重なることです。人気校が5校重なることは稀なことです。東海高校の倍率は安定傾向ですが、他の4校の倍率は、1校に集中するなど余程のことがない限り、過去と比べて高めになりにくいと思いますので、積極的にチャレンジしてもらいたいと考えています。
私立の大半は通知表を合否に加味せず、入試の得点のみで決めています。教科ごとの配点や難易度もそれぞれ異なっていますが、これをあまり考えずに受験する生徒が少なくありません。例えば中京大中京、名城大附属は教科別の難度に高校の特徴が出ていると思います。
――公立高校の入試は5教科とも同じ配点ですね。
1教科22点満点で、問題数も少ないため、得意科目だけで差をつけることは困難です。それだけにどの教科に力を入れるべきか迷うかもしれません。苦手教科ばかりやっていてもよくないし、得意科目ばかりでもだめで、バランスが大事です。
公立も私立も、合否を決めるのは「合計点」です。各教科で1問から3問ほどしか出題されない難問を心配して、そのような練習問題ばかりに時間をかける前に、確実に得点すべきレベルの問題で失点しないための学習に時間をかけるべきです。
どれだけ時間をかけてもわからない場合は、翌日以降に先生に質問することにして、今できること、今すべきことに注力してください。「満点主義」は受験で一番危ないことです。
過去問は大問ごとに時間を測る
――過去問の取り組み方にはコツがあるそうですね。
これからの時期は志望校の過去問を解くことが大事になりますが、ただ自宅で解くだけでは不十分です。
本番の環境は自宅と全く違い、相当な緊張感があります。普段以上に問題文を丁寧に読んで、解答も丁寧に書くでしょう。すると解答スピードが落ち、時計もすごく気になります。
そこで、過去問を解く時はトータルの時間ではなく、大問ごとに時間を測りましょう。最終的に何分余ったか。それは解答を見直すのに十分なのかを確認します。そうすると問題を解く大問ごとのペースの良し悪しがわかります。
問題を解く順番も考えておきましょう。大問1から解くという決まりはありません。例えば、英語は長文問題を解いた後に小問を解いた方が解きやすい、ペースが掴みやすいという人もいます。これも過去問を解くことで知ることができます。
愛知県立高校の欠員数は、2021年度に2600人を超えた
「公立王国」愛知の変化とその背景
――愛知は「公立王国」と言われてきましたが、最近はどうでしょう。
公立を目指す方が大半であることは変わりませんが、ここ数年で私立を第1志望にする方、公立第1志望・私立第2志望にする方も増えてきました。この間、国や自治体による私立高校の授業料補助制度が充実したことも、私立人気を押し上げた要因の一つだと思います。
愛知の公立は、合格したら入学しなければいけないのが原則です。公立の1カ月前にある私立入試の結果がよければ、公立を2校とも挑戦校にする生徒も増えてきました。
近年、いくつかの公立で定員割れが出るようになっていますが、少子化に加え、私立を選ぶ生徒が増えていることも影響しています。こうした流れの中、公立高は今回、十数校で定員を減らしました。愛知で公立の中高一貫校を導入したのも、先々を見据えてのことと思われます。
受験生に「プラスの言葉」を
――本番に向け、中学生と保護者へのアドバイスを。
合否を決めるのは内申点や得点力ですが、入試本番での発揮能力に大きな影響を与えるもう一つの力が、精神力です。
定期試験は3教科やって帰宅し、翌日、気持ちを切り替えて臨むことができますが、入試本番は1日全教科、しかも独特の雰囲気の中で長時間過ごします。これを想定し、ある程度の緊張感を持って勉強することが大切です。
保護者のみなさんは、お子さんの自宅での学習姿勢や集中度が気になったり、難しい問題に何時間もかかって勉強が進んでいなかったりするようであれば、気持ちや行動を切り替えさせるプラスの言葉をかけてあげてください。
プラスの言葉とは、「自分がそれを言われた時にプラスの気持ちになる」言葉です。
保護者自身にも受験経験があると思いますが、保護者にとっての正解が子どもにとっての正解とは限りません。塾に通っているのであれば、子どもに言う前に先生に相談してください。先生の話と親の話が一致していると、子どもの納得感はより高まります。