新種のコメで地元の味を追求した新たな酒を 1ランク上の純米大吟醸クラスが目標 岐阜
2024年11月27日 17:23
酒造りが盛んな岐阜県の東濃地域。「地域ならでは」の新しい酒を生み出そうと、地元で育てた新品種のをコメを使った酒造りが始まっています。
岐阜県恵那市岩村町。織田信長の叔母が一時、城主を務めたとも伝わる「岩村城」の城下町で、いまも歴史ある建物が立ち並びます。
この町で、江戸時代から日本酒造りを続けているのが「岩村醸造」です。
25日、この秋に収穫された新米を使った仕込みが行われていました。
約150キロのコメを蒸しあげ、手作業で釜から取り出します。
その一部には麹菌を振りかけて、別室へ。
「麹室」と呼ばれる部屋で2日間かけて麹が作られます。
残りは、職人たちが麻布で醸造タンクに運び入れます。
水や麹とともにタンクの中で35日ほど、低温でゆっくりと発酵させ、酒が出来上がります。
新たなコメ『酔むすび』
地域ならではの新酒を
この時期恒例の作業ですが、今年はいつもと違うところがありました。
「『ひだほまれ』とは違う管理をしないとコメのうまみが出ないと感じた」(岩村醸造 杜氏 鈴木正人さん)
岩村醸造では普段「ひだほまれ」という品種のコメなどを使っていますが今年は新たなコメを使った酒造りに挑戦しているのです。めざすのは…。
「『酔むすび』という(コメを使った)お酒は、もう1ランク上の純米大吟醸クラスを目標とした」(岩村醸造 渡會充晃 代表取締役)
精米後(イメージ)
42年ぶりの酒米の新品種
酒造りに使う新品種のコメを開発したのは岐阜県の研究機関、中山間農業研究所中津川支所。
岐阜県としては、実に42年ぶりの酒米の新品種の開発となりました。
「従来の『ひだほまれ』と比べて、心白が小さいのが特徴」(岐阜県中山間農業研究所 中津川支所 工藤渓汰 研究員)
「心白」とは、白く濁って見えるコメの中心付近の細かな空洞が集まっている部分のこと。
日本酒用のコメは、精米の過程で、表面がかなり削られます。
心白が大きいと米粒が割れてしまうことがあるため、心白が小さい品種が求められていたのです。
「人と人を結ぶきっかけになるようなお酒になってほしいという願いを込めて、この品種の名前を『酔むすび』とした」(工藤渓汰 研究員)
『酔むすび』は東濃5市で今年初めて本格的に栽培・収穫
東濃5市で本格的に栽培・収穫
今年は東濃地域の5つの市で初めて本格的に栽培・収穫され、地元の酒蔵10軒ほどで日本酒の仕込みが行われています。
「その地方の原料からどういうストーリーで製品ができるかという流れを作ることによって、販路の拡大にもつながる」(渡會さん)
もともと酒造りに使われていた「ひだほまれ」はその名の通り、標高の高い飛騨地域で生まれた品種。
夏場の暑さなどで知られる東濃地域には、必ずしも適した品種ではなかったといいます。
地元に適したコメで、地元の水を使って酒を造る。
そんな思いもあり、新しいをコメを関係者は望んできたといいます。
岩村醸造 渡會充晃 代表取締役
来年2月に販売開始予定
海外での日本酒人気も高まる中で、11月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しになったというニュースも。
「世界に対する影響力が非常に大きいと感じているので、未知数ではありますけど、多くの期待を寄せている」(渡會さん)
地元関係者の期待を背負った今回の挑戦。
「酔むすび」を使ったお酒は、来年2月に販売が開始される予定です。
「お酒ファンの方に喜んでもらえる、楽しんでもらえるお酒はもちろんだが、普段日本酒を口にしない方に1杯でも手に取ってもらえる酒も目標として掲げている」(渡會さん)