【乳幼児突然死症候群】こども家庭庁が5年ぶりに“寝かせ方”を大幅改定 発症率下げる3つのポイント

2024年11月30日 08:01

中村保育園の園児(提供:中村保育園)

 スヤスヤと眠る、赤ちゃん。
 お昼寝をしていたのは、名古屋市中村区の中村保育園の0歳児クラスの園児です。

 赤ちゃんを見守る際、看護師はあることに注意しているといいます。

 中村保育園の看護師
 「乳幼児突然死症候群のことも気を付けて、いつも視診と触診で園児の様子を確認しています。うつ伏せで寝ていたら、あおむけにするようにしています」

 この時期から注意したいのが、乳幼児突然死症候群(SIDS)です。

 乳幼児突然死症候群とは、何の予兆や既往歴もないまま、乳幼児が死に至る、原因のわからない病気。厚労省によると、乳幼児突然死症候群で亡くなった乳幼児は、2023年は48人で、乳幼児の死亡原因の第5位となっています。

 愛知県によると、県内では、2023年が1人、2022年が5人、2021年が4人亡くなっていて、いずれも1歳の子どもだということです。

 

AEDを使った救命救急講習の様子(提供:中村保育園)

もしもの場合・・・名古屋の保育園の対応は

 中村保育園では、15分おきに保育士や看護師が呼吸や体温をチェック。もしものことがあったときの対応として、AEDを使った救命救急講習を実施しています。

 また、突然起こる乳幼児突然死症候群の原因や、子どもの様子がおかしい場合の対応方法などを知ってもらうため、0歳児クラスに入園する園児の保護者に資料を配っています。

 中村保育園 宇都宮美智子園長
 「病気を知ってもらうことが大切。熱が出たら病院に連れて行けばいいという、単純なものではないところが怖いので、保護者には頭の片隅にでも覚えていてくれて、もしものことが起きた場合に対応できるようになってほしい」

 7年ほど前、宇都宮園長の知り合いの乳児が、母親の近くで寝ていたところ、乳幼児突然死症候群を発症し、亡くなったといいます。元気がいい乳児で、突然の出来事だったということです。

 

こども家庭庁の啓発ポスター

発症率を下げる3つのポイント

 こども家庭庁は、11月を対策強化月間として、乳幼児突然死症候群の発症率を下げるために、3つのポイントを呼びかけています。

 まずは、「タバコはやめる」。
 妊婦自身の喫煙や、周りの人が吸ったタバコの副流煙を妊婦が吸う「受動喫煙」も生まれた後に乳幼児突然死症候群を発症する要因に。

 次に、「できるだけ母乳で育てる」。
 母乳で育てられている赤ちゃんのほうが発症率が低いことが研究でわかっているということです。

 最後に「1歳まではあおむけに寝かせる」。
こちらも、研究でわかっていることだということです。うつ伏せ寝、あおむけ寝のどちらの態勢でも起こっているものの、あおむけに寝かせたほうが発症率が低いといいます。

 

取材に答える「子どもの睡眠相談室クークールナ」川口リエさん(48)

睡眠の悩み相談を受ける専門家 認知度高まる一方で不安の声寄せられる

 睡眠中に亡くなる原因として、「窒息」もありますが、乳幼児が寝ているときに両親が気をつけるべきこととは…

 子どもの睡眠の悩み相談を月に30件ほど受ける、子どもの睡眠相談室クークールナの川口リエさんに聞きました。

 子どもの睡眠相談室クークールナ 川口リエさん(48)
 「保護者にも、乳幼児突然死症候群(SIDS)についての認知が上がってきており、SIDS予防のガイドラインにある、『1歳まではあおむけに寝かせる』というのを知る方も増えてきました。半面、『あおむけに寝かせたいけど、うつ伏せになっちゃって大丈夫ですか』という質問は増えてきたと感じています。また、SNSを見ていて怖いなと思うのが『あおむけに寝かせたい』と、うつ伏せにならないようにするアイテムを使い、体の動きを制限してしまっている状態で寝かせていることです。それは、SIDS予防のガイドラインにある『赤ちゃんの寝床にはしっかりシーツをかけられた固めのマットレス以外何もおかない』というのと反してしまいます」

 相談があった際には、アメリカ小児学会のガイドラインを参考にし、寝床を安全な状態になっていることを大前提として、両方向から自由に寝返りができれば、あおむけにする必要はないこと、起きている時間にうつ伏せ運動を積極的に取り入れてうつ伏せになっても自分で対処できる筋肉をつけることを伝えているということです。

 

こども家庭庁のリーフレットより(左:去年 右:今年)

こども家庭庁「掛け布団は軽いもの」→「掛け布団を使わない」

 こども家庭庁は、赤ちゃんの口や鼻を覆ったり、首に巻きついたりしてしまうリスクのあるものは危険だとして、枕やタオル、衣服、よだれ掛け、ぬいぐるみなどは近くに置かないように呼びかけています。

 そして、こども家庭庁は去年まで、「掛け布団は軽いものを使う」としていましたが、今年は「掛け布団を使わない」に変更しました。

 担当者は、アメリカ小児学会のガイドラインを参考にし、赤ちゃんがどういうタイミングで寝返りするかわからないため、寝床に窒息のリスクがあるものを置いてほしくないという思いから変更に至ったと説明しています。大幅な改定は5年ぶりだということです。

 子どもの睡眠相談室クークールナ 川口リエさん(48)
 「海外では、赤ちゃんは親と別布団で寝かせ、掛け布団は使わないことが睡眠中の安全のためのガイドラインの項目に含められていますが、これまで日本では寝具についての注意がされていませんでした。恐らく、添い寝文化がアジアはあるので、文化的背景を鑑みながらだと思います。添い寝だと大人は布団をかけますし、赤ちゃんでも動いて親のところに来られるので、赤ちゃんだけ掛物をせず、固いマットレスにするという環境が物理的に整えにくいです。ですが、今年から、睡眠中の窒息事故防止のための注意事項として、赤ちゃんには掛け布団は使わず着る物で温度調節することが、追加されました。SIDSは温め過ぎでもリスクが高まります。冬場は風邪をひかないように、と寒さが心配になりますが、室温が低い中で赤ちゃんにいっぱいかけるのは避けてください。光熱費が上がっていますが、できれば赤ちゃんのうちは室温をあげて薄着で寝かせるのが安全で寝やすい環境です」

 

パパとママへ「子どもがひとりで寝る力をつけるということも選択肢に入れて」

 川口さんは2児の母で、子どもの夜泣きに悩まされた経験から、赤ちゃんの睡眠に関して研究を続けています。
そんな川口さんが乳幼児を育てる、両親に伝えたいこととは…

 子どもの睡眠相談室クークールナ 川口リエさん(48)
 「赤ちゃんが夜中寝返りの度に仰向けに戻していると、パパもママも寝不足になり心身ともに疲れ、不安も大きくなります。また、子育てをしながらの情報収集は大変。育児の情報を調べるのはパパなどご夫婦でうまく分担されるママパパも増えてきましたよ。寝づらそうに見えても寝床は安全が一番。赤ちゃん用のマットレスでも気持ちよく眠れます。また、添い寝をせずにお子さんがひとりで寝る力をつけるということも選択肢に入れていただきたいです。睡眠中にも突然赤ちゃんが亡くなってしまうことを知っていただき、赤ちゃんの健康や命を優先して、悲しい事故を起こさないようにしていただきたいと思います」

(メ~テレ記者 小澄珠里)

 

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