3カ月でうなぎ職人への時短プログラム…基準満たない稚魚も新手法で「大きく」 業界の新たな動き
2024年12月3日 17:29
その年を象徴する食を発表する「ぐるなび」のイベントで、「今年の一皿」に選ばれたのはうなぎでした。東海3県でもなじみの深いうなぎ料理ですが、職人の高齢化や稚魚の不漁など厳しい環境にさらされてきた関連業界にも新たな動きが広がっています。
岐阜県各務原市の「大衆鰻料理店 阡家」(せんや)。3日もお昼から香ばしい匂いが。
店長の玉腰万寿己さん。去年4月にこの店の店長になりました。
「子どもが成人したので、これを機に何か新しいことを始めようと思って」(玉腰さん)
玉腰さんはパートとして飲食店で接客をしたことはありましたが、調理に本格的に携わるのは初めてだったといいます。
「ウナギを触ること自体が初めてだったので、最初は不安だった。専属の指導者がいて、串打ちや焼き方をマンツーマンで教わった」(玉腰さん)
大衆鰻料理店阡家 店長 玉腰万寿己さん
時短プログラムで3カ月で職人に
店の経営者は、「今年の一皿」の発表会に出席した松井智子さん。業界が職人の高齢化など人手不足の中、画期的な育成プログラムを行っています。
「若手職人や新しい人材が望めず、人材不足の一環として短期育成のプログラムを開始した。(育成期間は)約3カ月です」(うなぎ家 松井智子 社長)
ちまたでは「串うち3年、裂き8年、焼きは一生」などと言われるうなぎ料理の世界。松井社長は短期でマスターできるスキルの持ち主をターゲットにしたと言います。
「子育てがひと段落してもう一度、社会復帰したい女性をターゲットにしている」(松井社長)
入社から2年が経った玉腰さん。今は楽しんで仕事をしています。
「なんでもやってみれば出来るものかなと。裁縫に似ている。針と布を縫っていく感覚が私はあった」(玉腰さん)
「つしま鰻」の養殖場
愛知・津島市にウナギの新ブランドが
「ウナギと言えば、愛知県の『一色産うなぎ』が有名ですが、津島市でもウナギを養殖しているんです」(メ~テレ 上坂嵩アナウンサー)
愛知県津島市にあるウナギの養殖場。ずらりと並ぶ16のタンクの中に、約4万匹のウナギが養殖されています。
「ほかの養殖場で大きくならなかったウナギをここに入れているので、今から大きくするところ」(つしま鰻 大塲良太郎 代表取締役)
こちらで行われているのは「完全閉鎖タンク循環式」の陸上養殖。酸素を多く取り込んだ水で満たしたタンクに出荷基準に満たなかったという小さめのウナギを入れて、大きく育てるといいます。
「もともと廃棄とか海外に向けて出されていた、いらなくなったウナギをここで大きくして資源の有効活用をしようということで」(大塲 代表取締役)
絶滅危惧種にも指定されているウナギ。新たな手法は資源の有効活用になるだけでなく、持続可能性が心配されているウナギの流通を増やすことにもつながります。
さらに、えさにもこだわりがーー
「普通の練り餌にオイルの入った粒餌を入れて、さらに地元の酒粕(鶴見酒造)を少量入れている。地元のものを使いたいということで」(大塲 代表取締役)
「つしま鰻」で作ったうな丼
ビニールハウスを有効活用
今年11月から本格的にスタートした「つしま鰻」の養殖。使わなくなったビニールハウスの有効活用にもなっているといいます。
「廃虚化されたビニールハウスがいっぱいあって、そこでもともと農業だったところを、水産業に有効活用していくのが目的」(大塲 代表取締役)
実は一足早く”つしま鰻”の試食をしたという大塲さん。お味はーー
「3人で食べて正直においしかった。とってもおいしくて、これならいけると」(大塲 代表取締役)
「今年の一皿」に選ばれ、ますます注目が集まるウナギ。持続可能性などの新たな付加価値を加えた「つしま鰻」は、来年の土用の丑の日には食べられる?
Q.つしま鰻というブランドを作っていくことは目標に入っていますか
「今は海外で食べられているというのを聞いているので、どんどんみなさんにウナギを食べてほしい」(大塲 代表取締役)