最大で三重2万9千人、愛知1万9千人が犠牲  国が新たな被害想定を発表 南海トラフ地震

2025年3月31日 17:22

東海地方にも大きな被害をもたらすとされる南海トラフ巨大地震について、国が新たな被害想定を発表しました。

 31日午前、専門家の検討会がまとめた報告書が防災担当大臣に手渡されました。
 
 南海トラフ地震の被害想定は約10年ぶりに見直されました。検討会のトップを務めた名古屋大学の福和伸夫名誉教授は。

「南海トラフ地震の被害を減らさない限り、国の将来が非常に危ぶまれると感じていて、なんとか国民の皆さん、産業界の皆さんに本気になって対策を進めてほしいと思う」(福和氏)

 国の検討会が2012年にまとめた前回の被害想定では、死者は最大で約32万3000人でした。新たな被害想定では約29万8000人で、前回よりも減少しています。

 東海三県の最大死者数は三重県で約2万9000人、愛知県で約1万9000人、岐阜で約300人です。

 

南海トラフ地震が発生した場合の東海3県の最大死者数

早期避難や避難施設の整備で死者数減

 早く避難することで死者の総数は約17万7000人まで減らすことができると想定されています。

 被害想定を検討した専門家はこう話します。

「『地震からすぐに避難するんだ』と早期避難への意識が高いというのは、地震の揺れがおさまったらすぐに避難できる状況におかれているかどうか」(愛知工業大学 横田崇 教授)

 死者数が減少した要因として、各地で避難施設が増加したことが挙げられています。

 この地方でも、愛知県田原市で津波避難タワーが整備されたり、飛島村でも津波からの避難施設が複数、整備されたりするなどしました。

 建物の耐震化も進み、全壊する建物の数は前回の想定よりも4万棟ほど少ない、約235万棟となっています。

 

災害関連死者数は約2万6000人から5万2000人

新たに災害関連死者数を発表 最大で約5万人を想定

 高さ1メートルの津波の到達時間については、東海地方で最も早いのが三重県尾鷲市で3分。前回の想定よりも1分早くなりました。名古屋市は1時間35分で、7分早くなっています。

 新たな被害想定について、三重県の一見知事は

「2026 (令和8年)年に南海トラフ地震に特化した計画を作っていく予定。もちろん、共助や公助を我々はやっていきますけど、まずは自分の身は自分で守るということを考えていただきたい」(三重県 一見勝之 知事)

 新たな被害想定では災害関連死の人数が初めて公表され、約2万6000人から5万2000人とされています。

 南海トラフ地震で被害を減らすためには「住宅の耐震化」「家庭での備蓄」「迅速な避難行動」に取り組むことが重要だと指摘しています。

「南海トラフの巨大地震は必ず発生する。今回の被害想定を機にもう一度防災対策を確認して未実施のことがあればしっかり実施することが大事」(横田教授)

 

対策をした場合における津波と建物倒壊の被害の違い

地震・津波対策整備で被害大幅減

 私たちの対策と行動次第で地震の被害は格段に少なくできます。

 津波による死者数は最大で約22万人と想定されています。この数字は早く避難しようとする意識が低い場合を想定した人数です。

 しかし、全員が地震発生後10分で避難を開始した場合は、死者数が津波による死者数は約7万人。7割減らすことができると想定されています。

 さらに、現在全国の耐震化率は90%。地震の揺れで、約128万棟が全倒壊すると想定されています。耐震化率が100%になると、全倒壊数が約36万棟になり、被害を7割減らすことができます。

 家具などの転倒・落下防止対策を100%にするなどでも7割被害が減ると言われています。

 

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