浅田真央をはじめ数多くの名スケーターを生み続ける中京大中京。
現在、看板を背負うのが、3年生の横井ゆは菜。
まもなく高校卒業を迎える彼女には、やり残したことがありました。
「私が入ってから1回も団体優勝できていないんでインターハイに苦手意識がある」
インターハイには、学校対抗の団体戦が存在。
各校最大3人が出場できる個人戦の合計ポイントで日本一の高校が決まります。
中学の時から世界で活躍していた横井は、前人未踏の7連覇中だった名門校に入学。
さらなる伝説を築いていくはずでした。
ところが、1年の時、連覇を途切れさせてしまうと・・・
2年の時は、演技前から重圧に押しつぶされ涙。
ミスが相次ぎ、優勝を逃してしまいました。
「すごいメンタルが弱いんだなって痛感した試合でした。
一切このような試合をしないように、不安の残らない練習を積み重ねて自信を持って試合に臨みたい」
涙でぬれたあの日から・・・
改めたのは練習に取り組む姿勢。
1本1本集中し、不安に打ち勝つ精神力を鍛えていきました。
今シーズン、日々の成果が表れます。
ジュニアグランプリシリーズでは、参戦5年目にして念願のメダルを獲得。
さらに、国内ではジュニアのカテゴリーでは負けなし、日本一の称号も手にしました。
その後も、たとえ正月であろうともリンクの上に・・・
「正月気を引き締めて練習に取り組めるかが、特にインターハイはそこが大事だと思うので」
来たるリベンジの舞台を前に、決して灯を絶やしませんでした。
地元名古屋で開かれる今年のインターハイ、横井のもとに集ったのは超強力メンバー。
ジュニアグランプリ2位の実績を持つ、2年生荒木菜那に・・・
グランプリシリーズデビュー戦で2位になった1年生の山下真瑚。
横井も含め、なんと3人とも日の丸を背負う高校史上最強トリオで臨みます。
迎えた本番、予選を勝ち抜いた全国77校の頂点へ!
横井の声援がこだまする中、2年生の荒木が先陣を切ります。
「(横井)ゆはちゃんだなっていうのはすぐに声でわかりました。頑張ろうと思いました」
荒木は去年、横井とともに団体優勝を逃したメンバー。
だからこそ、一緒に日本一になりたい思いが強くありました。
昨シーズンのジュニアグランプリで2位になった原動力、ダイナミックなジャンプをすべて着氷!
暫定首位で、次につなげます。
続いて登場したのは、1年生の山下。
序盤から持ち味である高さのある連続ジャンプを披露。
全選手の中で、最も高い出来栄え点をたたき出します。
「ここで自分がすごい低い点数を出してしまったらみんなに迷惑がかかるので、頑張ろうと思いました」
スーパールーキーが首位に立ち、中京大中京は暫定でトップ2を独占します。
そして、渡されたバトン。
「菜那ちゃんと真瑚ちゃんがとても良い演技で好スタートを切ってくれていたので、良いところを見せたいなっていうのはありました」
横井は冒頭、去年出鼻をくじかれた連続ジャンプを綺麗に着氷し好スタート。
持ち前の表現力で、野性味あふれる“ライオンキング”の世界を演じていきます。
「ここでまた失敗したら同じことの繰り返しだなって、絶対にそれだけは避けたいって思いがあったので」
全てのジャンプを決め、苦手意識があった舞台で自己ベストを更新!
中京大中京トリオは全日本女王の坂本に続き個人トップ4に入り、団体戦首位で折り返します。
翌日のフリー。
横井はインターハイ最後の演技。
一本一本丁寧に決めていきます。
密度の濃い練習は、いつしか精神安定剤になっていました。
「緊張しても本番落ち着いて臨めるようになってきたかって、しっかり練習に取り組めたっていうのがこういうのにつながったと思います」
リベンジの舞台で見せた、成長した姿。
坂本に続き個人2位に立ちました。
さらに、荒木が個人5位、山下が個人4位と後輩たちも続きました。
団体戦では、中京大学中京が見事優勝!!
「今回こそはって気持ちも強かったですし、後輩たちがとても頼もしかったので安心して優勝することができました。
有終の美みたいな、最後に団体優勝ができて本当に良かったと思いました」
満面の笑みでコメントした横井。
名門校を3年ぶりの女王に返り咲きに導き、ようやく宿題を片づけました。