3月26日。いよいよペナントをかけた戦いの幕が上がった。
「オレ流」落合監督が率いる中日ドラゴンズが目指すのは
4年ぶりのリーグ制覇。
そのカギを握るのがプロ13年目を迎えた井端弘和である。
去年チームは宿敵ジャイアンツの前に8勝16敗と大きく負け越した。
その原因のひとつが攻撃力の差。
興味深いデータがある。去年両チームのクリンアップが挙げた打点は、
G292打点・D308打点とほぼ互角。むしろドラゴンズのほうが多い。
しかし、その直後を打つ6番バッターはG91打点に対しD50打点。
ドラゴンズの打点はジャイアンツのおよそ半分とここに大きな差がある。
そして今シーズン落合監督は6番バッターに井端を指名した。
どんな役割を求めているのか。
井端のバッティングを良く知る井上打撃コーチが代弁してくれた。
「クリンアップが続いた後にまだチャンスが残っている、
得点圏で何とかもう1点欲しいという時のバッターとして
今、現状でドラゴンズの中で何とかこいつはしてくれるだろうと・・・」
ダメ押しの1点を奪うための井端の起用。
そんな中、井端はオープン戦の中で新しい役割への感覚を養っていた。
「6番は初球から打っていかないといけない打順でもあると思うので
極力なんでも手を出していました。オープン戦は・・・」
井端は実戦で試しながら、自らの6番バッター像を描き出していた。
「今までに無かったここという時に、ヤマを張ってフルスイングしようかな。
6番は決められる時に決めとかないといけないので、
少々リスクを負いながらでも、決めにいこうと思ってますけど」
迎えた開幕戦。ナゴヤドームのスコアボードに6番井端の名前が記された。
いよいよ新しいシーズンが始まった。
そしてカープが3対1と2点リードの6回裏。
井端の第2打席。ライト前に弾き返し今シーズン初ヒットを記録する。
試合はこのまま9回へ。
ツーアウトから5番和田がフォアボールを選び2塁1塁。
今シーズン初めて得点圏にランナーをおいて井端に打席が回ってきた。
しかし、結果は初球の明らかなボール球にバットが当たってしまい、セカンドゴロ。
選球眼の良い井端にしては『らしくない』結果。
そこには意外な真実が隠されていた。
実は直前の和田の打席でカープのストッパー永川は変化球のコントロールが悪く、
4球続けてボールを投げてしまいフォアボールとなっていた。
井端はその姿をネクストバッターズサークルから見つめていた。
「間違いなく真っ直ぐでくると思っていたので、初球から勝負をかけたけど・・・」
打点が求められる6番バッターとして「初球、真っ直ぐ」にヤマを張った。
結果は、予想通り真っ直ぐ。だが完全なボール球だった。
しかしバットが止まらなかった。
「(1番か2番だったら)もう少し冷静になっていたかな。
間違いなく手は出していないですね。
そこまでガツガツしなくて良かったかな。(6番は)難しいですね。」
打点を挙げるという6番バッターの仕事。
それを意識しすぎたために『らしくない結果』を招いてしまった。
それでも翌日の開幕第2戦。
7回裏、得点圏にランナーをおいて迎えた今シーズン2打席目。
タイムリー内野安打で今シーズン初打点を記録すると、
第3戦にもチームが負けているところから逆転となる2点タイムリー。
井端は6番バッターとしてきっちり結果を出した。
「ただ単に打つだけの6番でもないような気がするので、今までやってきた
1番、2番を踏まえた6番バッターを目指して頑張ろうかなと思います。」
今シーズンが終わった時、
ドラゴンズに今までに無い6番バッターが誕生しているかもしれない。