2009年、夏の甲子園。
史上最多、7度目の全国制覇を果たした中京大中京。
広島にドラフト2位で入団した堂林を中心とする超強力打線で、見事4041校の頂点に輝いた。
大会終了後には43年ぶりの歓喜もつかの間、新チームは春の甲子園に向けて新たなスタートを切っていた。そして、秋の東海大会で準優勝。3年連続30回目のセンバツ出場を決めた。
そんなチームの中心となるのが、MAX145キロ。
さらには切れ味抜群のチェンジアップで相手を翻弄するエース・森本隼平。
去年夏の甲子園では2本のホームラン。キャプテンさらには4番を務め、チームを引っ張る強肩強打のキャッチャー・磯村嘉孝。
王者として挑んだ春のセンバツ。
そこには去年の夏からの成長。さらにはバッテリーとしての強い絆があった。
1回戦の相手は盛岡大付属。 序盤からエース森本が毎回ランナーを背負うものの、粘りのピッチングで7回を3失点。
5対3と2点リードでマウンドを譲る。
8回からは2年生・浅野が2番手としてマウンドへ。
しかし、9回フォアボールとエラーでノーアウト2塁1塁のピンチを招く。
ここで中京大中京はエース森本を再びマウンドへ送る。
一発出れば逆転の場面。だが、そんな状況でも森本は落ち着いていた。
「去年の夏最後までマウンドに立っていたことが大きいと思います」
去年の決勝で森本は同じような場面を経験していた。
中京大中京6点リードで迎えた9回。
2点を返され、なおも続くピンチでマウンドに上がる。
1点差に迫られるも、最後の1点を守り抜き優勝の瞬間をマウンドで迎えた。
この試合でも1点を失うが、なんとか踏ん張り逃げ切った。
それは、去年夏の激闘を経験し、くぐり抜けてきた証だった。
続く神港学園との2回戦。
互いに1点ずつ取り合い迎えた6回、森本は味方のエラーなどでノーアウト2塁3塁のピンチを背負う。それでもこの状況で、バッテリーの信頼関係が相手に傾きかけた流れを食い止める。
森本の決め球はチェンジアップ。
三振を取るためにランナー3塁の状況で、あえてリスクが高いこのボールで勝負に出た。
「(ピッチングは)低めというのが大事なので。力んでも(磯村が)ワンバウンド止めてくれるので、それは助かったなというのは何回かあります」と森本が話せば、
磯村も「(チェンジアップを)要求したのは僕なので、それを止める覚悟でサインを出しているので、(止めることは)当たり前だと思っています」と頼もしく語る。
磯村が必ず止めてくれるからこそ森本も自信を持って投げられる。2人の信頼関係で、このピンチを切り抜けた。
春はベスト8で敗れたものの、大きく成長した森本と磯村。聖地・甲子園で信頼関係をさらに深めた。
名古屋に戻ると、すぐさま練習が再開された。すでに夏へ向けた戦いは始まっている。
夏の予選まで残すはあと3ヶ月。
最後の夏、そして連覇に向けて、残された時間を1秒たりともムダにはできない。