2月1日。今年も沖縄でドラゴンズの春季キャンプが始まった。
恒例となった初日の監督会見で指揮官から注目の発言が飛び出した。
「できなければ別の選手を使います。
それくらいの覚悟でやってもらわないと。」
ドラゴンズが誇る鉄壁の二遊間、セカンド荒木雅博とショート井端弘和。
指揮官はこの二人のコンバートを実行に移した。
キャンプ初日。早速、荒木がショートでノックを受けた。
しかし、プロ15年目を迎えた守備の名手も
新しいポジションに戸惑いは大きいようだった。
その2日前。自主トレを打ち上げたばかりの荒木に
コンバートについて尋ねてみると・・・
「緊張感というのがいつもと違うだろうし、安心する事はまずできない。
レギュラーを獲るという気持ちになってやらないと」と危機感を口にした。
そんな中で今シーズンのテーマを挙げてもらった。 「原点回帰。全ての面で」
プロ15年目、ゼロからのスタート。
キャンプで荒木は守備練習に時間を割いた。
しかし、練習をすればするほど課題が浮き彫りになっていく。
自らの動きに納得できない。結局、不安を拭い去ることができなかった。
オープン戦に入っても通常の練習を行った後、再びグラウンドに姿を現し、
時間いっぱいまでノックを受ける。とにかく追い込み続けた。
ところが3月18日のオープン戦で荒木は走塁の際に左足を痛めてしまう。
追い込んだ末の怪我。11年ぶりに開幕を2軍で迎えることになってしまった。
それでも荒木に落胆の色はなかった。
「やりすぎた感が自分の中で強いので、(ポジションが代わるので)
やらなきゃいけないという気持ちが強くて、その中の怪我なので・・・」
1軍に復帰したのは開幕からおよそ1週間後の4月4日。代打での出場となった。
「うれしいですよ、やっぱり。出られたこともそうだしファンの歓声もそうだし」
ところが思うように結果が出ない。4月11日時点の打率は1割台。
そんな中4月13日の横浜戦で荒木が1塁へ、ヘッドスライディング。内野安打をもぎ取る。
「出遅れたし、出てきたら打てない。この悔しい自分の思いが出た」
このあとチームは劇的なサヨナラ勝ち。荒木の思いが結果につながった。
4月20日のヤクルト戦ではチャンスを広げる好走塁。
直後のベンチで足を気にする荒木。
「やれる範囲のちょっと上ぐらいの全力を出してやる」
長い間、レギュラーを務めてきた男のプライドが見えた。
4月も終盤に入り徐々に本来の動きを取り戻し始めた荒木。
復帰後17試合目となった4月23日の阪神戦では
今シーズン初盗塁を記録するなど、足の状態も戻りつつある。
しかし本当の不安は、まだ解消されていない。
「守備でしょ。(ショートに)本当に慣れるまでに今年1年はかかると思っているから。
それもひたすら練習して・・・。」
「とにかく必死にやった結果が最後どうなるかということで今年はやってますから・・・」
結局たどり着いたのは練習という荒木らしい結論。
新しいポジションを自分のものとするために守備の名手がガムシャラに挑む。
そしてまた、次の試合がやってくる。
「ひとつひとつですよ。飛び越すことはできないです。
ひとつひとつ最後まで走り続けます。」
15年目の原点回帰。ゼロからのスタートをきった荒木。
最後にどんな姿をみせてくれるのだろうか。