放送内容

2010年08月14日(土)放送

中日ドラゴンズ 荒木雅博 「必死に・・・15年目の決意」

カテゴリー:野球

「今年は本当に何も考えることなく必死にやるだけ・・・。」


これがプロ15年目を迎えた荒木雅博の決意である。
セカンドからショートにコンバートされた今シーズン序盤。
守備の名手が余裕がないと苦しんでいた。
「焦りが出るんですよ。セカンドは捕ることに集中して、捕ってそれから投げればアウトだけど。ショートは打った瞬間にランナー見てボール見てってやっているとやっぱり焦るから・・・」
ファーストが近く、まず捕ることに集中できたセカンド。
捕ってすぐに投げなければアウトにできないショート。
頭では分かっていたものの、そのギャップに苦しんだ。
6月終了時のエラーの数は13。
2006年に記録した自己最多の12をシーズン半ばにして上回ってしまった。


そんな中、7月6日の横浜戦。思いもよらぬ事態が起きる。
7回裏、ノーアウト2塁1塁のピンチで横浜村田の打球はセカンドゴロ。
ダブルプレーかと思われたが、荒木の送球が乱れ1塁はセーフ。
ここで落合監督が動いた。
荒木に代え岩崎達郎をショートへ。
守備の途中で交代を告げられたのは落合監督になって初めての事だった。


3日後、チームは地元ナゴヤドームで首位巨人との3連戦を迎えていた。
そこに荒木の姿もあった。
途中交代した次の試合で何事もなかったかのように戦列に復帰。
そして前半戦、最大のヤマ場となったこの戦いで荒木が強烈な輝きを放つ。
この3連戦で荒木の打率は5割を超えた。
今シーズン初めて上がったお立ち台。自らの力で不安を吹き飛ばしてみせた。
そして7月16日。マツダスタジアムでの広島戦。
3回、ツーアウト2塁で東出の打球は二遊間へ。
荒木がダイビングキャッチするも内野安打。
しかし、抜けていれば確実に点を失っていた打球。
このあと山井が梵を三振にきって取り広島に得点を許さず、唯一のピンチを切り抜けた山井は6年ぶりの完封勝利を挙げた。
荒木のプレーが歓喜の時をもたらしたのだ。
「ショートでダイビングしてもアウトにならないんだし、身体に負担もかかるし
止めとけと言われるけどやっぱり守っていると自然といっちゃうしね。
ピッチャーも一生懸命なげてるしね。」


全力でボールを追いかける。
手を抜いたり、あきらめることは一切ない。
それが荒木という男である。


そんな荒木に今シーズン印象に残るプレーを聞いてみた。
「ないですね。特に今年は。そういうものも忘れるぐらい毎日が必死だから。」
開幕から5ヶ月が過ぎた。6月以降荒木のエラーの数はわずかに2つ。
長い間、レギュラーを務めてきた男の意地。
荒木の反撃は始まっている。
「上手いって見られてやるセカンドよりも、下手くそだって思って見られるショートでやるのも楽しいですよ。可能性がまだあるから・・・。」


プロ15年目。必死に新たな可能性にチャレンジする荒木雅博。
新しいポジションを極める日も決して遠くはない。