ピッチ上、ひときわ輝く背番号がある。選ばれた者だけが背負うことが出来る、栄光の10番。今、グランパスで10番を背負うのが小川佳純。
2010年グランパスは、悲願のリーグ初優勝を果たした。しかし、チームの華々しい成績とは裏腹に小川は、複雑な思いを持っていた。
「ずっと小さい頃からサッカーをやってきて、一歩一歩順調に前の年を上回るようなそういう成長を自分の中では、右肩上がりに高校もそうですし、大学もそうですし」「で、2010年度に関しては、初めてちょっと右下に下がったかなっていうシーズンだったと思う」
明治大学を卒業後、2007年グランパスに加入。ルーキーイヤーにリーグデビューを果たすと、リーグ出場5試合目で初ゴール。順調にキャリアを重ねる。
2008年。グランパスの監督に就任したストイコビッチは、小川を右サイドに抜擢。これが、はまった。持ち味のゴールに絡むプレーで、小川はこの年11得点11アシストの活躍。新人賞とベスト11をダブル受賞した。
その活躍の翌年、小川に用意されたのが、背番号10番だった。その10番を背負い、小川はチーム初挑戦の舞台ACLで躍動。日本人最多の5得点で、アジアのベスト4進出に貢献した。
そして2010年。優勝をターゲットに掲げたチームは大型補強を行う。それに伴い、小川のポジションも中盤の中へと変更される。そしてシーズン開幕。小川の調子が振るわない。開幕7試合はスタメン出場するものの、その後はやがて、途中出場が小川の出番となっていく。途中出場する10番。小川自身も、悔しさをもっていた。10番への気負いがあるわけではない、ただ、期待と責任はだれよりも感じていた。だからこそ、10月2日の仙台戦。自らのシーズン初ゴールで、優勝のためには落とせない勝ち点3をもぎ取ったときには、正直「ホッとした」。
26歳の小川。チームでは盛り上げ役を買って出る。痒いところに手が届く。絶妙のあいの手を入れる小川。そんな自分自身を小川は「常に何かしら(状況を見て)考えている」。
「考える」―。それは、プレーでも同じ。スピードパワーで勝負するタイプではない。頭を使って、相手の裏に走りこみ、フリーになる状況を作り、ゴールに絡む。それが小川の一番の特徴。その持ち味を存分に出し、チームの勝利に貢献する。それが、10番の仕事。
悔しい思いをした2010年を経て、小川が2011年シーズンに臨むテーマは。
「再起」
一番いい時の自分を取り戻す。それは、単に以前のいいプレーと同じプレーをするという意味ではない。再びピッチで、自分の持ち味を全面に出し、輝くこと。「再輝」
10番の逆襲が始まる。